もうちょっとメイクビリーブ
∞∞∞∞∞
待ち合わせ30分前。
駅前に着いて辺りを見回すけど、もちろんまだ来てるわけない。
ため息をついてそばにある樹を見上げた。
色とりどりの電球がチカチカ光って目障りだ。
こんなもん見て何が楽しいんだろうか?
「すごーい!」
「綺麗だねぇー」
雑踏の中で周りを見渡すと、何人かが携帯で写真を撮っている。やっぱり楽しい奴は楽しいらしい。
俺はさみぃし、流れてる音楽がやたらうるさい。
クリスマスだからって何をアホみたいに騒いでんだろう?
鈴が鳴るくらいで楽しくなる人間の気持ちを、俺は一生理解できない。
******
ことの始まりは、クリスマスの一週間前だった。
「冬が寒くて本当に良かった……なんて、昔の人は上手いこと言うよねぇ」
「いやそれ昔の人じゃないですよ」
チカラの指摘に黒坂昴が「そうだっけ」とトボける。
反応するだけムダだっつーの。
「そういえば、駅前の大きなツリーはもう見ましたか?」
チカラの隣を歩く転校生が嬉しそうに言った。
昴とチカラがすかさず反応する。
「まだ見てないやー。中谷は?」
「俺もまだ……なんか、クリスマスは特別なライトアップがあるそうですね」
「そうなんだ!リュウ、中谷と一緒に見に行けば?」
急に昴が話を振ってきた。
クリスマスツリーのライトアップって、そんなの…
「要は木が光るだけだろ?何が楽しいんだよ」
三人は目をぱちくりさせて俺を見た。
そして昴がため息をつく。
「いやーこれだからリュウくんはロマンがなくてイヤだよ!クリスマスのなんたるかをわかってないね」
「なに言ってんだ?お前」
「中谷はリュウくんと一緒にクリスマス過ごしたいよね?」
チカラは昴の質問に一瞬考え込んだものの、やっぱり俺と似たような反応だった。
「いや別に……女の子じゃあるまいし、無理してそういうの気にしなくてもいいです」
「えぇ〜?」
昴はまだ不満そうだ。
そんな昴に転校生が尋ねる。
「黒坂先輩は誰と過ごすのですか?恋人さん、たくさんいらっしゃいますよね」
「俺?そうだなぁ。あみだくじで決めようかな」
お前みたいな奴がロマンを語るなよ…
と思ったけどバカらしいので黙っておいた。
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