もうちょっとメイクビリーブ
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その後無事に、東郷先輩にチョコを食べてもらった。
先輩は相変わらず無表情だったけど……本当に喜んでるのか?
「嬉しいに決まってるだろ」
「本当ですか?先輩甘いものあんまり好きじゃないし、女の子が作った方が絶対上手だし…」
「そういうもんじゃねぇだろ。お前が俺のために作ってくれたことが嬉しいんだよ」
「……そ、そうですか」
やっぱり、東郷先輩はちゃんとわかってるんだ。
上手くできなくても食べてほしかったこと…
「そっかぁ…」
「ん?」
だから恋人たちはイベントに執着するんだな。大切なのは気持ちで…
東郷先輩に喜んでもらえたし、俺も東郷先輩のこと(少しは)好きなんだって自覚できたし、たまにはこういうのもいいな。
「……中谷」
「え?」
東郷先輩に呼ばれて振り向くと、急にキスしてきた。
「な、なんですか?」
「今のお前、なんか可愛かったから」
そう言って先輩はまた唇を重ねてきた。
気持ち良い。東郷先輩の舌が、なんかいつもと違うような…
「……あ」
「中谷?」
「チョコの味がする…」
東郷先輩の舌から移ったんだ。
って言ったら、先輩は呆れたように笑った。
******
「……お前に、こんな才能があったんだな…」
「え、お菓子作りですか?」
東郷先輩が空になった袋を見つめている。
「たぶん、いや絶対それは贔屓目ですよ…」
「そうか?」
「うぅん……あ、でも黒坂先輩はシンプルで良いねって言ってくれたんですよ!」
「……はぁ?お前、昴にもあげたのか!?」
「はい!夏樹にも」
相談に乗ってもらったお礼に、昨日の昼休みにあげたんだ。
そのことを話すと東郷先輩は激怒した。
「だって東郷先輩、学校来なかったし…」
「だからって……なんで恋人の俺より先に食わせてんだよ!」
「順番なんて関係あります?」
「……そもそも!俺以外の奴に食わせんな!今後一切アイツらとは喋るな!つーか会うな!」
「なんでそこまで言われなきゃいけないんですか!」
「お前は俺の恋人だろ!」
「だからってアンタの言いなりにはなりませんよ!」
やっぱりあげるんじゃなかった…
結局、カップルらしかったのははじめだけだ。
イベント事って執着しすぎるとケンカになるってことが、よくわかった。
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