もうちょっとメイクビリーブ
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2月14日は土曜日だった。
前日、東郷先輩が学校に来なかったからどうしようかと焦っていたら夜に電話が来た。
用件は案の定「明日うちに来い」だ。
俺は初めて東郷先輩のお誘いを嬉しく思った。だって当日に渡せるのってなんだか嬉しい。
というわけで、俺は作ったお菓子を持って多少ウキウキしながら東郷先輩の家に行ったのである。
「東郷先輩、今日なんの日か知ってますか?」
東郷先輩の家に着いて、俺は鞄にお菓子を隠したまま尋ねてみた。
「今日?あぁ……バレンタインだろ?」
「……嫌いですか?そういうの」
東郷先輩の顔が少し険しくなったのが気になってそう言うと、東郷先輩は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「苦手なんだよ。急にあんなもん渡されても迷惑なだけだろ」
「……迷惑…」
「中谷?」
「いえ!そ、そうですよね…」
東郷先輩がたくさんの女の子に囲まれるところを想像した。
そうか、そうだよな。急に渡されても迷惑だよな…
「中谷?どうした?」
「……だって…」
「な……中谷!?」
悔しくて涙が出てきた…
だって俺は、東郷先輩は喜んでくれるかなってずっと考えて…
「中谷、なんかあったのか?」
「だって東郷先輩が……め、迷惑って言うから…」
「お前に言ったんじゃねぇよ!俺はお前が一番大切だ!」
「じゃあ……バレンタインは?」
「は?」
「俺のだったら……受け取ってくれますか?」
「……あ、当たり前だろ!」
東郷先輩が流れる涙をティッシュで拭いてくれた。
俺はその手を払いのけて鞄を開ける。
「中谷?」
「……これ…」
お菓子が入った袋を差し出すと、東郷先輩が目を丸くした。
「お前が……作ったのか?」
無言で頷くと東郷先輩は真顔のまま静止してしまった。
黒坂先輩の嘘つき。全然喜んでくれないじゃないか…
「……しい」
「え?」
「すげぇ、嬉しい…」
東郷先輩は袋を受けとると、そのまま俺の体を抱き寄せた。
「中谷…」
「はい?」
「愛してる」
「……そ、それはどうも…」
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