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もうちょっとメイクビリーブ
再び東郷リュウの章
相手に思いきり蹴りをいれたところで数台のバイクが走る音が近づいてきた。
いくら加勢が来ようが全員返り討ちにしてやる…
と思ったら男はよろめきながらその中の一台に乗りこんだ。

「てめぇから仕掛けてきた癖に逃げんのかよ!」

バイクで走り去る相手を見て舌打ちをした。
事故って死んじまえ…

ふと我に返って、当初の目的を思い出した。
朝メシ買いに来たんだった…

コンビニまでの道を歩いていると、後ろから小さな声がした。

「にゃあ…」

まさかと思って振り向くと、フードをかぶって猫耳を隠したチカラがいた。
なんでこんなところにいるんだ…

「中谷!なんで外に出てんだよ!?」

駆け寄るとチカラは怯えた顔で何か言いたそうに口を震わせた。
そして服についた血の痕を一生懸命、指差している。

「あぁ……悪い。行く途中でケンカ売られたから、ちょっと買ってた…」

どう言えばいいかわからなくて、なんとかそう説明するとチカラは俯いてしまった。

「中谷……怒ってるのか?」

チカラは首を振る。
もしかして…

「心配して……探しに来てくれたのか?」

ようやくチカラが顔を上げた。
声をあげて泣きじゃくっている。
不安な思いをさせてしまったんだろうか?……俺は最低だ。

「中谷、ごめんな……守ってやらなくちゃいけねぇのに、ごめん…」

そっと抱きしめると、チカラも背中に手を回してきた。
コイツ、可愛すぎる…

******

コンビニで朝メシと、チカラが消毒液と絆創膏を買って家に帰った。
猫耳、誰にも見られてねぇと良いけど…

『傷、手当てします』

チカラがそう書いて渡してきたからおとなしく従った。
優しくて献身的で、つくづく最高の恋人だと思う。

手当てを終えるとチカラはまたメモを書いて俺に渡してきた。

『元の姿に戻れたら、話したいことがあります』

メモにはそう書いてある。
事前に言われると気になるけど、言葉にして伝えたいことだってあるだろうと思って頷いた。

もしかして、悪い話じゃねぇよな…

「おい、なかた…」

チカラを見ると、すやすや眠っていることに気がついた。
そういや、眠くなりやすくなってんだったか…

そっとチカラを抱き上げて、ベッドに運ぶ。
幸せそうに熟睡しているチカラの顔は、たまらなくいとおしい。
あと何日こうしていられるんだろうか?
この幸せも今のうちだ…

チカラの唇にキスしそうになって、寸前で頬にズラした。

愛してる。チカラ、俺にはお前しかいねぇんだ…

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