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もうちょっとメイクビリーブ
再び中谷チカラの章
「……ん…」

目を覚ますと、ベッドに寝転んでいた。いつの間に寝てたんだ…
明るかったのに部屋が薄暗い。俺、このまま猫のままだったら人生の大半を寝て過ごすことになるんじゃ…
やっぱり猫になりたいなんて言うんじゃなかった。

東郷先輩は…

「起きたかよ」

「ん、にゃっ!?」

「中谷……気持ち良かった」

さっきの情事を思い出して顔が熱くなった。

東郷先輩はベッドのすぐそばに座って本を読んでいる。いつの間にか服着てるし…
ずっとここに座ってたのかな?
東郷先輩もたいがい暇人…

「中谷?」

……違うか。俺がまたベッドから落ちたりしないように、見ててくれたんだ。
この人、本当に優しい…

「……うにゃっ!」

忘れてた!
東郷先輩の傷、手当てしなくちゃ…

メモ帳にそう書くと東郷先輩は「ほっときゃ治る」と言って手当てさせてくれなかった。
それでも俺はにゃーにゃー鳴き続ける。

東郷先輩は呆れたようにため息をついた。

「あのなぁ、中谷……俺の家に手当てするようなもんがあると思うか?」

……そりゃそうか。
なんか本格的に落ち込んできた…
このままじゃもっと東郷先輩に迷惑をかけるかもしれない。
早く元に戻りたいな…

「中谷……泣くのか?」

『早く元に戻りたい』と書いて見せると、東郷先輩は俺の頭を撫でた。

「あんま焦んなよ……俺が守ってやるから」

守ってほしいんじゃない。
東郷先輩の迷惑になるのは、イヤなんだ…

「長くて一週間らしいけど……俺は、別にこのままだって…」

東郷先輩の言葉に耳を疑った。
このままで、良い……?
俺は1日も早くこんな姿とサヨナラしたいのに、東郷先輩はこのままでも良いっていうのか?

そんなのって、ひどい…

「……にゃ…」

「中谷?」

「うっ……うぅっ…」

「中谷、泣くなよ……どうした?」

このままでも良いなんて、東郷先輩はなに考えてるんだろ…

******

「中谷……まだ機嫌わりぃのか?」

夜ご飯の後もお風呂の後も、俺はだんまりを決め込んでいた。
まぁどっちにしろ喋れないんだけどさ。

「なんで怒ってんだよ?言え」

やだ!
という意思を示して俺はそっぽを向いた。
すると東郷先輩のひくーい声。

「中谷……俺に隠し事すんのか?」

「にゃっ…」

「ムカつくんだよ……お前のこと、全然わかってやれねぇ…」

慌てて振り向くと東郷先輩は俺のことを真っ直ぐな目で見つめていた。
『ムカつく』なんて言葉、悲しくなるから使わないで…

「……にゃあ」

「ん?」

俺はメモ帳を手にとって『俺がこのままでも良いって本当?』と書いてみた。
東郷先輩はそれを見て少し動揺したみたいだ。

「そうか……中谷、悪かったな」

「にゃ……?」

「お前がそのままで良いなんて思ってたわけじゃねぇよ。ただ…」

ただ、なんだろう…

「……嬉しいんだ。お前と一緒に、暮らしてるみたいで…」

「にゃ…」

なんて卑怯なタイミングで、卑怯なことを言うんだ。
そんなこと言われたら……嬉しい。

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あきゅろす。
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