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もうちょっとメイクビリーブ
東郷リュウの章
気にかけていた食事は、なんの問題もなかった。

まさか猫が食うようなもんを欲しがったらどうしようかと思ったら、チカラは焼いた食パンを美味しそうに食べていたからだ。

ただ、食い終わった途端に何回も欠伸をしだした。

「中谷、眠いのか?」

チカラは首を振ったけど、目が少しとろんとしてる。
めちゃめちゃ可愛い…
チカラといつも一緒にいれば、いつもこんな可愛い顔を見られるんだろうか。

「にゃあ…」

「やっぱり眠いんだろ?」

チカラの手を引いて寝室に連れていく。そのままベッドの上に乗せると、チカラは崩れるように寝転んでしまった。

ダメだ。可愛すぎて、今日中に死ぬかもしれない…

ベッドのそばに胡座をかいて、昨日の夢を思い出した。
俺があの声にちゃんと反応していたら、チカラはこんな事にならずに済んだんだろうか?

いや、そもそも今の状況こそ夢なんじゃ…

「うにゃああぁっ!」

「チカラ!?」

振り向くとチカラがベッドから転がり落ちていた。

「大丈夫か!?どこも痛くないか?」

「うぅ…」

チカラは頭をおさえてうずくまってる。
今までベッドから落ちたことなんてなかったのに……猫になったのが関係してんのか?

「中谷、ごめんな……大丈夫か?」

チカラを抱き起こして頭を撫でてやると、そっと抱きついてきた。

急に眠くなったのもベッドから落ちたのも、猫化の影響なんだろうか?
ますます混乱するばかりだ…

******

俺に抱きついたまま寝てしまったのは予想外だったけど、数時間後にチカラは目を覚ました。
頭を押さえて少し呻くと、俺の存在に気付いて申し訳なさそうに頭を下げた。もちろん耳もぺたりと下がる。

「眠くなりやすくなってんのかもな……無理しなくていいから」

他にどんな特性が移ってるんだろうか。やっぱり外に出すのは厳禁だな…

「中谷……今のうちに飯買ってきてやるよ。何が良い?」

チカラにメモ帳を渡すと何かを一生懸命書き始めた。
受け取ってみると、おにぎりの絵が書いてある。

「そんなもんでいいのか?なんでも好きなもん言えよ」

チカラが首を振ってメモ帳を指差したから、仕方なく俺は出掛ける準備を始めた。

「じゃあ中谷、ちゃんとうちで待ってろよ」

チカラが無言で頷く。
なんか、結婚生活みたいで興奮する…

こんな非現実的な事件でさえなければ、これ以上ない幸せだ。
こうやって、チカラのために出かけてチカラの待つ家に帰る日々が永遠に続いたら…

……チカラはきっと、嫌がるだろうけど。

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あきゅろす。
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