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もうちょっとメイクビリーブ
東郷リュウの章
その日の夜は機嫌が悪かった。
なんでって最愛の恋人のせいだ。人が風呂入ってる間に寝やがって、明らかにワザトだろ。

だけどそんなの些細な問題だ。
今日はチカラもテストがどうとかで落ち込んでたし、可愛がってやるのは明日で良い。
そんな期待を馳せながら俺はチカラを抱きしめて眠りについた。

――すみません。

不意に、そんな声が聴こえた気がした。
チカラが俺を呼んでるんだろうか?
俺は「なんだよ?」と返したつもりだったけど、それは思ったより遠く聞こえた。
自分の声じゃないみたいだ。

――貴方の恋人さんのことなんですけど。

また声が聞こえた。チカラの話をしてるってことは、コイツはチカラじゃない。途端に興味が失せてしまった。

――無視しないでくださいよ。さっき貴方の恋人、猫になりたいとか言ってたじゃないですか。どう思います?

どう思うってなんだよ?
可愛いこと考えやがるなって思ったよ。それがなんだよ。
言ったのか思っただけかわからないけど、とにかくそう返した。

――数日かけて猫にしてあげることができるんですけど、叶えてあげましょうか?

数日かけてってなんだ。
寝ぼけた頭で考えてみたけど全くわからない。
また無視していると、声が聞こえた。

――反論はないみたいなので、叶えてあげますね。徐々に変身していくのでちゃんと伝えてくださいね。

変身……ってなんだ?
あぁ、チカラに会いたい。猫だろうがなんだろうがチカラが愛しくてたまらない。

――じゃあ、さようなら。

そうだ、チカラは落ち込んでたんだ。起きたらチカラを慰めてやらなきゃならない。
学校なんかサボって、本物の猫を見せに行こうか。

そういやチカラが猫に変身って、誰かが言ってたような…

その後また記憶が途切れた。
覚えてねぇけど、脳が働いてないままチカラと会話していた気がする。

『うにゃあああ!!』

『……中谷!?どうした?』

とにかく目覚めた時にはもう、涙目のチカラが俺を睨んでいたんだ。

******

『どんな夢だったんですか?』

チカラが見せてきたメモ帳を読むとそう書いてあった。
それに対し俺は言葉で答える。

「なんか、お前の願いを叶えてやるみたいな……そんな夢だよ」

俺はチカラに夢の内容を話した。
こんなSFな内容の夢を他人に話すなんて、どうかしてるけど…
それ以上にどうかしてることが目の前で起こってるんだから仕方ない。

またチカラがメモ帳に何か書き始める。そして俺はそれを受け取った。

『元に戻る方法は言ってなかった?』

「そうだな。言ってなかったな」

チカラが納得したように頷いた。そして耳が少し折れる。
どうやらチカラの感情と連動しているらしい……可愛すぎる。

「とりあえずお前ここにいろよ。家にも帰れねぇだろ?メシとかは俺が買ってきてやるから」

チカラは困ったような顔をしてまたメモに書き始めた。

『それは悪いです!どこかで一人ひっそりと暮らします』

……本気で言ってるのか、コイツ。

「あのなぁ……許すわけねぇだろ。とにかく俺のそばにいろ。命令だ」

そう言うと、チカラは申し訳なさそうに頷いた。

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