もうちょっとメイクビリーブ
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とにかく……俺は夏樹がいるから来たっていうのに、冗談じゃない!
「さーて夕飯までちょっと時間あるけど、どうしよっか?」
黒坂先輩がそう言った瞬間、俺は夏樹の肩を掴んだ。
「夏樹!い、一階まわってみようよ!」
「あ、いいですねっ」
逃げるように夏樹と一階に降りる。思わず大きなため息がもれた。
「チカラさん、大丈夫ですか?」
「あ、うん……なんとか…」
近くを見たらお土産屋さんがあったから、二人で見ることにした。
「夏樹、黒坂先輩と同じ部屋でいいの?」
「はい!僕のことは気にせず二人でお楽しみくださいね!」
夏樹は嬉しそうにお土産を選んでる。
気遣いっぷりは夏樹らしいけど……ホントは俺と一緒が良いって言ってほしかったな…
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家族へのお土産を買って夏樹は301に、俺は302に戻る。
中に入ると東郷先輩が畳の上で寝ていて目を疑った。
黒坂先輩と一緒にいるのかと思った……いや、そんなことより!
夕方に寝たりするんだ、この人も。
やっぱり人間なんだな…
「……東郷先輩…」
別に起こさなきゃいけないわけじゃないけど、とりあえず呼んでみる。
寝顔さえもカッコいいってなんなんだろう、ホント。詐欺だよな…
「……チカラ?」
寝顔をずっと見つめていたら、東郷先輩の目がゆっくり開いた。
「あ、せんぱ…」
「……お前……転校生とどこで何してたんだよ?」
うわ、睨んでる。
恐る恐る「一緒にお土産買ってただけです」って言ったら、東郷先輩がため息をついた。
「お前、そんなにアイツのこと好きなのかよ?」
「す、好きとかそういうんじゃ…」
「アイツとばっかりいるじゃねぇか。お前の恋人は誰だよ?俺だろ?」
そう言われると……東郷先輩の気持ちを全然考えてなかったかもしれない。
東郷先輩と遠出するのも初めてなのに…
「……ごめんなさい」
俯いて謝ると東郷先輩はまたため息をついて俺の頭を撫でた。
「中谷」
「なん……ぅわあっ!?」
顔を上げたら東郷先輩の顔が近づいてきたから、慌てて後ずさりした。
東郷先輩は何事かと俺を見てる。
「こ、こういうトコロでそういうのはやめてくださいっ」
「……はぁ?」
「だって、隣の部屋に夏樹と黒坂先輩もいるし…」
「お前……そんなんじゃセックスも禁止とか言い出しそうだな?」
「あっ当たり前じゃないですか!」
あっちも思ってるんだろうけど……この人の常識は理解できない!
「絶対ダメです、今日はホントに!絶対ですからね!」
東郷先輩は渋々と言った感じで頷いた。
「わかったよ……俺から襲ったりはしねぇ。約束する」
なんだその言い方…
まぁいいか。ひと安心だ。
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