もうちょっとメイクビリーブ
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「いやぁ、すっかり冬だね。時に夏樹くん、冬と言えば?」
「うーん、温泉ですかね!?」
「なるほどね!……ということで、みんなで温泉に行きましょー」
「……なんなんですか、その三文芝居」
最近、夏樹と黒坂先輩の仲の良さに拍車がかかってきた。
こんな打ち合わせまでするなんて…
「温泉って、どこに行くんですか?」
「まだ検討中だけど、近場の温泉旅館で一泊。なんかすごい素敵じゃないですか」
今はお馴染みの昼休み。
寒くなってきたので、最近は図書室を無断使用している。
それにしても、温泉なんて突然すぎる…
「まぁまぁ中谷、行くだろ?」
「そりゃあ夏樹が行くなら行きますよ。温泉も、好きだし…」
黒坂先輩は俺の答えに満足するように頷いた。
「そう、夏樹くんが来るなら中谷も来る。中谷が来るなら、リュウも来るだろ?」
3人の視線が東郷先輩に集まる。
東郷先輩、温泉とか入んのかな……あんまり似合わないけど。
と思っていたら、東郷先輩はいつもの無表情で言い放った。
「ダメだ。中谷の裸を公衆にさらすなんて、犯罪だろ」
「なっ……!!」
何言ってんだこの人は!?
温泉は裸をさらすための場所じゃないだろう!
「あーリュウくんがそう言うだろうと思ってお部屋に露天風呂がついてる旅館を探してるから。俺ってホント気が利くよね」
黒坂先輩の言葉に、さすがの東郷先輩も言葉を失ったようだった。
先輩たちはどうでもいいけど、夏樹と旅行に行けると思うと楽しみだな…
そんなことを思いながら、連休は男四人で温泉に行くことになったのである。
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『冬のメイクビリーブ302』
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ところが。
「えっ!?二人部屋!?」
当日、旅館に着いて判明したのは黒坂さんいわく「301は俺と夏樹くん、302はリュウと中谷。素敵な部屋割りだよねぇ」ってことだった。
「そんなの、聞いてないですよ」
「でももう取っちゃったもん、2部屋」
「だったら、東郷先輩と黒坂先輩が同じ部屋で泊まればいいじゃないですか」
「ぜってぇ嫌だ」
「俺も、それはイヤ」
二人して即答。それにしても、そんな嫌そうな顔しなくても。
「チカラさん、チカラさんと東郷先輩が同室なのは当然ですよ!」
夏樹は全く不服そうじゃない。
いや夏樹は良くても、俺は夏樹と同室が良かったな…
「殺すぞ」
「……えっ?」
「転校生と同じ部屋が良いとか言ったら、殺す。転校生を」
「……東郷先輩と同じ部屋で、幸せです…」
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