ショート*ストーリー ∞ 「……湊?」 美央が目を丸くして俺を見る。 そりゃそうだよな……俺、美央の前で泣いたことないもん。 「な……なんでわかってくれないんだよっ……玲はっ……俺の大事な、人なんだよ……本当に、本当に大事なっ…」 あとはもう言葉にならなかった。 涙が溢れて、止まらない。 美央は驚きのあまり言葉を失ってるし、ていうかここ道のど真ん中だし、あぁもうどうしよう… 「……あのさ」 その時、玲が突然口を開いた。驚いて顔を上げると、玲はまっすぐ美央を見つめていた。 「……あんたの言う通り、付き合ってる。俺と、こいつ…」 ……え? こいつって誰? 「もう良いだろ?こいつに、つきまとわないでやって」 そう言うと、玲はすたすたとマンションの中に入って行った。 な… 何が起きたんだ? 頭の整理ができずに立ち往生していると、美央に思い切り肩をはたかれた。 「なによ!!やっぱり付き合ってるんじゃない!!」 「だ……誰が!?玲と、俺!?」 「しらばっくれるのも良い加減にしてよね!!」 美央は怒って歩きだす。 ……あ、やばい。なんか… 「美央!!悪い……俺…」 「……湊が、そんな泣き虫だったなんて知らなかったよ…」 美央は振り返らずにそのまま去って行った。 「……うーん、良い奴なんだけどなぁ……」 美央のこと、好きっちゃあ好きだった。今度は友達として会えたら… って……そんなことより!! 「れーいー!!」 「うるせー爆竹飲ますぞ!!」 そんなの想像するのも嫌だよ!! 玄関のドアを開けると、玲はリビングで牛乳を飲んでいた。 まだ背伸びるって信じてるんだよね、玲たんは… 「じゃなくて、玲!!さっき、つ、付き合ってるって……俺と!!」 「うるせぇな…」 「……いいの?」 「まぁ……試しに、付き合ってみるか」 「玲……!!あ、あ……ありがとー!!今日から一緒に寝ようね!!ハネムーンどこに行く!?」 「よし、別れる」 「えー!?ごめん!!ハネムーンは冗談!!」 「一緒に寝るのは本気なのかよ!?」 ヤバい!!嬉しい!! 今まで生きてきた中で一番嬉しい!! 俺、今日から玲と恋人同士なんだ……!! 「(仮)をつけろ、(仮)を」 ……俺、今日から玲と恋人同士(仮)なんだ……!! 美央と久しぶりに再会してどうなるかと思ったけど、まぁ結果オーライだよね!! 玲と恋人(仮)になれたし……いや、(仮)なんてすぐとっぱらってみせるんだから!! 「玲!!せめて今夜だけでも一緒に!!」 「ぜってー嫌だ!!」 「変なことしないから!!」 「されてたまるかっ!!」 「うぅ…」 [*前へ] [戻る] |