ショート*ストーリー Asahi-3 しばらくユズの部屋に、二人の息遣いだけが響いた。 「ふあっ……ん…」 ユズが漏らす小さな声に、興奮せずにはいられない。 さっきから、下半身が硬くなってるのを自覚していた。 「んっ……んんっ」 ユズが苦しそうに呻いたので、そろそろかわいそうだと俺は唇を離してやった。 ユズと目が合う。 火照ったユズの顔はすげーエロい。 潤んだ瞳なんかもう、本当そそる… ユズは俺を見つめたまま、何も言わない。 怒ってんのか?悲しんでんのか? どう思ってんだよ… 「ユズ」と声をかけると、ユズが急に口を開いた。 「もうちょっとだけ……教えて」 「……え」 間抜けな声を上げてしまった。 まさかユズの方から、要望されるなんて思ってもみなかった… 「い、今のじゃまだ覚えらんなかったっていうか…」 真っ赤な顔で訴えるユズ。 「じゃあ……もう少しゆっくりやるか?」 「い……いや、もっと、激しく……して」 ……嫌だよ。 もっと激しくしたら、お前は彼女ともっと激しいキスすんだろ? 俺と練習した成果を、彼女に見せるんだろ? あー、でももうダメだ。我慢できねー。 どうせユズはもう俺のユズじゃないんだ。せめて今だけは……俺でいっぱいにしてやる。 俺はもう一度ユズに口付ける。実際自分のキスが上手いかどうかなんてわからないけど、ユズの期待に応えるために全神経を舌に集中させた。 そうして、どれくらいの時間キスしていただろうか? 俺たちの唇を離したのは、玄関の鍵が開く音だった。 「……お母さんだ」 ユズが呟く。 仕方ねぇけど……ここまでだな。 俺はゆっくりユズから離れた。 俺はこの時間を、一生忘れない。 ユズが確かに、俺のものだった。 ユズ、離したくない。今まで通りバカみたいに俺の後をついてくるユズでいてほしい。 でも、もう叶わないんだ。 自分に皮肉を吐くように、俺はユズに笑って言った。 「ユズ、早く彼女とキスできるといいな」 俺は嘘をつく。この世で一番愚かな嘘を。 [*前へ][次へ#] [戻る] |