ショート*ストーリー .. 「嫌だあぁぁあっ!!」 今度こそ思いきりノゾミくんの身体を突き飛ばした。ノゾミくんの頭が床に当たってガン、と大きな音を立てる。 し、死んでないよね……? 「さ、く?どーし、たの?」 俺の大声を不審に思ったのか、兄貴が部屋に入ってきた。 部屋の中には、挙動不審の俺と倒れてるノゾミくん。ど、どう誤魔化せばいいんだろ……コレ。 「あ、兄貴を待ってたんだよ……ノゾミくん」 そう言って、とりあえず頭を押さえて呻くノゾミくんを指差す。 すると兄貴はノゾミくんを一瞥して、俺に平然と言った。 「ノゾミ……じゃな、いよ?」 「……え?」 まさか……じゃあ誰? 「えっ!?」 ノゾミくんの側に駆け寄って、耳にかかる黒髪をゆっくりかきあげる。 案の定、耳たぶにはピアスこそ無いもののピアス穴が空いていた。 これは、つまり… 「い、イノリ!?」 「いってぇ……朔ちゃん、俺を殺す気?」 顔を上げると、そこにはいつもの勝ち気な表情の祈がいた。 表情と態度でこうも似るものなのかよ… 「いやその前に、何その髪形?」 イノリの特徴は茶髪の緩いパーマ。 それがどうして、黒髪になってんの? 「昨日、3年だけ頭検だったって知ってた?久しぶりに黒染めしたから、せっかくだし朔ちゃんを騙してみようかなーと思って」 ば… 「バカなのか!?アンタ」 「でも朔ちゃん、見事に騙されてくれたじゃん。俺、楽しかったよ」 は……恥ずかしすぎる… なんせ俺、祈に向かって『祈、助けて』とか言ってたんだよ。ありえない。 「アイツのだっせぇ髪形を再現するのにすげぇ時間かかってさー。まぁ演技は簡単だったけどね!口調とか、そっくりだったでしょ?」 祈は楽しそうにペラペラと喋っている。 なんかもう、脱力… 「それにしても、紺を騙せなかったのは悔しかったなー。さすがノゾミの親友じゃん」 祈が兄貴に向かって言った。 兄貴は「ノゾミのオーラ、は青いけど……イノリは、オレンジだか、ら」とわけのわからない返事をした。 「何それ、わけわかんねぇ……つーか、ノゾミとケンカしたの?」 「え、知らなかったの?」 「朔ちゃんがケンカしてる前提で話してくるから合わせてみた」 そこも騙されてたのかよ!! 「け、んかじゃない。俺、とノゾミ……志望校ちがっ、た……から」 紺がゆっくり口を開いた。それがショックでノゾミくんのこと避けてたんだ? 「何それ?ちっさー…」 イノリは呆れたように笑う。 ノゾミくんが嘲笑ってるみたいで、気持ち悪い… [*前へ][次へ#] [戻る] |