ショート*ストーリー
..
「朔ちゃん?」
視線を上げると、この世で一番嫌いな男の姿が見えた。
「偶然だねー。何してんの?」
「な、何って…」
ここは地元の図書館。確かにコイツも近所だけど……まさかこんな所で会うとは思わなかった。
「何それ、宿題?」
祈が机に並べたプリントを覗きこむ。
「あまりに成績悪いから課題出されちゃったんだよ……アンタは?」
「頭悪いのは一緒だねー。俺は受験勉強」
そう言って当然のように俺の向かいに座る。コイツがいると、絶対気が散る…
と思うけど、たぶん逃げてもコイツは追ってくる。今まで何度も、俺はそのことを思い知らされてきた。
この男、上原祈に。
「朔ちゃん、どこ行くの?」
しばらくお互い黙って勉強してたけど、俺が席を立とうとすると腕を掴まれた。
「辞書とってくるだけだけど?」
あ、ちなみにこれは嘘じゃないよ。電子辞書とか持ってないしね、俺。
祈は何もいってこなかったから、俺は手を振り払って本棚へと向かった。
しばらく本棚の迷路に迷わされたけど、やっと辞書の棚を見つける。とっとと席に帰ろう……と思って手を伸ばすと、手首を思いきり掴まれた。
「いって……!!」
「朔ちゃん、うるさいよ」
首だけで振り向くと、祈が俺のすぐ背後に立っていた。
「離せよバカっ…」
祈はニヤリと笑って俺の手首を離したかと思うと、すぐに腰に手を回して俺の動きを封じる。
「何!?」
祈は相変わらず無言で、手を徐々に降ろしてくる。
俺の股関に辿り着くと、素早くズボンのチャックを開いた。
「やめっ……あっ!!」
「朔ちゃん、うるさいってば……ここがどこだかわかってる?」
こっちのセリフなんだけど!?
こんなの、誰かに見られたら……!!
「あっ、あ…」
「俺たちが初めてヤったのって図書室だったよね……覚えてる?」
祈は器用に下着の中に手を差し入れて、俺のモノをしごく。
くそ、こんな所で感じちゃダメだ…
「朔ちゃん、気持ちいい?」
「んっ……うん…」
身体が、言うことを聞かない。
俺はいつもこうだ。気付いたら、「もっと」を繰り返していた。
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