ショート*ストーリー
Yuzuki-3
「ん…」
朝日がようやく目を覚ました。
俺の姿に気が付くと、朝日はいつもより少し優しく俺を嘲笑った。
「ユズ……何泣いてんだよ?」
どうすれば良いかわからない。怒ればいい?責めればいい?それともこのまま泣き続ければいいのかな。
俺は何もわからない。
朝日は俺の泣き顔と自分の格好を交互に何度か見つめて、納得したように頷いた。
「そういうことか…」
そういうことって、どういうことだろう。
「朝日……どうして?俺じゃ、ダメなの……?」
朝日は何も言わない。
怖い。こんな朝日を見ても、俺は朝日を嫌いになれない。
心は悲しくてこんなに痛いのに…
「ユズ……泣くなよ…」
「だって……朝日…」
俺は涙をこらえながら足元を指差す。
床には使用済みのコンドーム。
朝日はコンドームを使わないから…
つまり、そういうことなんだ。
朝日は上半身を起こしてそれを見ると、自分を嘲笑うかのような笑みを浮かべた。
「朝日……何か、言って?」
「……抱かれる側は、どれくらい気持ち良いのかと思って」
「……気持ち良かった?」
「全然」
そう言うと、朝日は隣のベッドに脱ぎ散らかしていた服を取った。
「……責めねーのかよ?」
「え…」
「もう、俺を許せないだろ」
そんなこと急に言われても…
どうしよう、どうしよう。
ドラマなんかじゃ女の人は怒って逃げ出しちゃうけど、そうした方が良いのかな…
朝日から、逃げる?
目の前に朝日がいるのにそんなこと……できない。
「あさひ……すき…」
「……なんだそれ…」
朝日。
今、俺の元に戻ってきてくれるなら、すぐに来て。
たくさんたくさん鳴いてみせるから。
俺には、朝日しかいないから。
「許す……許すから、朝日の……な、舐めさせて」
朝日は整った表情のまま固まってしまった。
「お願い……そしたら、許すから」
俺だって、朝日を気持ち良くしてあげられるよ。
そう証明するから、
もう俺以外の人に快感を求めないで。
「ユズ…」
朝日はワイシャツをはおると、俺の顔をまじまじと見つめた。
なんて優しい目をしてるんだろ。
クラスメイトは朝日のこと『睨んでるみたいで怖い』って言うけど、朝日はすごく優しい表情をしてると思う。
「朝日……いいよね?」
「……わかった」
あぁ、
俺、幸せだ。
朝日に手を引かれて、俺はゆっくりベッドの上に乗る。
朝日、大好き。
朝日は俺だけじゃ満足できないの?
いつかまた、このコンドームを捨てた人とも、他の人とも、セックスしちゃうの?
それでも、
俺は朝日が好き。
「ユズ…」
「ん?」
朝日、俺のそばにいて。
「……泣いてるのか?」
俺は、いくら傷ついてもいいから。
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