ショート*ストーリー Yuzuki-2 「柚樹くん」 朝、教室に入った途端にクラスメイトの女子に声をかけられた。 「何?」 「あのね、放課後に保健室に来るようにって、先生が」 「……う、うん。ありがとう」 俺、何かしたかな… なんかすごく、不安だ。 「じゃあ、伝えたからねっ」 「……うん」 あの子、苦手だ… 朝日のファンとかで有名だから。 嫉妬なんかしたら朝日が気味悪く思うだろうから我慢してるけど、朝日がモテるのはすごく嫌だ。 だからってどうしようもないけど… 「あれ?」 「おーっす、柚樹」 「おはよ……朝日は?」 席に着くと、前にいるはずの朝日がいない。 いっつも早く来てるのに、友達も朝から見ていないらしい。 「ご主人様がいないとさみしーなー」 「もーそんなんじゃないよ…」 なんて言いつつ、やっぱり朝日がいないと落ち着かない。おまけに保健室に行かなきゃいけないし、変な日だなぁ… 「……電話も、出ないし…」 SHRが終わっても朝日は来なかった。休むなら連絡くれても良いのに……朝日は突然こんな風に俺を裏切るから嫌だ。 寝坊とかだと良いな……朝日に限ってないか。 結局朝日は学校を休んだ。 心配で仕方ない。何度も授業を抜け出して朝日の家に行こうとしたけど、勇気が出なかった。 こうして放課後行くことにしたんだけど、その前に先生からの呼び出しがあったんだ。 早く終わると良いなぁ… 「し、失礼しまーす…」 保健室に入ると……誰もいない。 先生、呼び出したこと忘れちゃったのかな? 入り口に立ち往生するのもなんだから、保健室の中に入ってみた。 デスクが置いてある。確か、養護教諭は三浦先生っていう若い男性のはずだけど… 「……あれ」 横にある仕切りの向こう側を見ると、ベッドの上に誰か寝ていた。 カーテンかければいいのに……って言うか、俺がかけてあげるべきかな? そんな思いつきからベッドに歩み寄る。すると、すぐに異変に気が付いた。 ……ふ、服着てない!! 何故かわからないけど、寝てるその人は服を着てなかった。男の子だから良いってもんじゃない。俺はすぐに顔を逸らす。 だ、誰だろう……? 顔は向こうを向いていたけど、朝日みたいな黒髪で… ……そういえば、朝日に似てる。 可能性を考えてなかったから気付かなかっただけで、思えば思うほどあれは朝日だった。 おそるおそる振り向いて、またベッドに歩み寄る。 ……そうだ、朝日。 顔が見えてなくとも俺が朝日を見間違うはずがない。 朝日を世界一愛してるのは、俺だから。 [*前へ][次へ#] [戻る] |