ショート*ストーリー
Asahi-1
「あ、朝日くんっ」
朝、教室に入った途端にクラスメイトの女子に声をかけられた。
「何?」
「あの、さっき先生が保健室に来てって……伝えるように、頼まれたからっ」
「あ?そう……さんきゅ」
早速踵を返すとその子にまた呼び止められた。
「な、なんかしちゃったの?」
「……いや、わかんね。とりあえず行ってくるわ」
女子はもう話しかけてこなかった。
最近また、ユズに『朝日はモテ期だ』とか言われるようになってきた。
そんなことねーし、そんなこと言われたってどう反応して良いかわかんねー。
たぶんユズは、俺に安心させるような言葉を言ってほしいんだと思う。
言ってやんねーけど…
「失礼します」
保健室に入ると、奥から白衣の男が出てきた。
「あぁ、坂井くんか。よく来たね」
「……先生ですか?」
「僕?この学校の養護教諭の三浦です。初めて見た?」
「まぁ…」
養護教諭が男って、色気ねーな…
しかも若い。こんな若い奴が本当に免許持ってんのか?
「俺、なんかしましたか」
「……どうして?」
「急に呼び出されましたから」
至極当然のことを言うと、三浦とやらがニヤリと笑った。
……嫌な予感だ。すげーやな予感。
「先週、保健室を利用したね?」
「……しましたね」
「誰と?」
「忘れました」
「……質問を変えよう。何をしてた?」
嫌な予感は当たらないことがない。
保健室でヤろうなんて言い出したのは俺だっけ、ユズだっけ。
どっちにしろ、俺の悪夢が始まった。
「……証拠もねーくせに」
「一応写真はあるけど?行為真っ最中の」
……悪あがきは良くねーな。
三浦が一歩俺に近づいて顔を覗きこんできた。俺は悔しくて三浦を睨む。
「……最高だな」
「あ?」
「いや……大人な話をしようか。相手の子……稲葉柚樹くん。これを知ったらショックだろうね。親や友達にバラしたら、君たちは引き裂かれてしまう」
「だから、俺にどうしろって?」
「……写真と同じこと、俺としよっか」
「……最っ低だな、お前」
そう言ってやると三浦は一瞬目を丸くして、世界一下劣な笑みを浮かべた。
「やっぱり、最高だな」
「またそれかよ……何?」
「坂井くんのその冷たい目……すっごくそそるんだ。最高だよ」
「な…」
反論の隙も与えず三浦が唇を押し付けてきた。
……気持ちわり…
しばらく三浦のキスに付き合っていると、三浦がゆっくり口を離した。
「……本当に良い目をするな、朝日くん…」
あぁ、
やっぱり俺モテ期なのかもしれない。
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