ショート*ストーリー ∞ 「あ……あはははは!!」 玲と美央の冷たい視線が突き刺さる。だってもう、笑ってごまかすしかないじゃんね!? 「美央なに言ってんの?勘違いしてるって」 「……ありえない……あたしは男に負けたの!?」 「だから違うってば!!……じゃあな!!」 不満げな顔の美央を置いて、俺は玲の手を引いて自分たちの部屋まで走った。 玄関を開けて中に入ると、玲が「湊!!」と俺を呼ぶ。 「ごめん玲、なんていうか……美央は本当にプライドが高くて、あと礼儀も知らないし…」 「そうじゃねぇ、手!!」 手……? 視線を下ろすと、俺の手は玲の手をぎゅっと握ったまま。 「……うわっ!!ご、ごめん玲…」 「気やすく触んなって言ってんだろ」 あぁ、パニックになってなきゃもっと玲の手を堪能できたのに… 美央さえいなければ!! 「で?どういうことだよ、さっきの」 「え!?うーんと…」 いろいろ嘘を探したけど、やっぱり大好きな玲に嘘をつくのは嫌だった。 「ご飯食べながらでも良い?」と言うと、玲が渋々頷いた。 微妙な空気のまま夕食を作って、テーブルに並べる。いつもは「人が食ってる時に話しかけんな」って言う玲も、今日は特別に俺の話を聞いてくれた。 「……俺、昔から女の子にあんまり興味がなくて……高校の時、ホモなんじゃないかってよく疑われてたのね」 「ホモじゃん、お前」 「……まぁ、今はそうだけど昔は違ったから…」 そう、だからすごく嫌だった。自分はなんで女の子を好きになれないのか、本当にわからなかった。 結局玲に出会って、解決したけど… なんせ俺は玲を愛するために生まれてきた男だからね!! 「えっと、それで一回女の子と付き合ってみようかなと思って……それで、美央と」 俺の言葉に玲が眉をひそめた。 あれ?言い方まずかったかな。 「いや、美央は一番仲良かったし、俺のこと好きなんだろうなって思ってたし……別に、利用したわけじゃないんだけど…」 あぁ、やっぱり玲にこんな話したくないよー!!せっかく2人で夕食食べてるんだよ?もっと愛とか語るべきじゃない? 「それで?」 「そ、それで……大学入って何週間かして、玲のこと好きになったから……お別れさせて頂いた、の」 あの時の美央は生涯忘れないくらい怖かった。付き合ってた時も俺が他の女の子と喋るだけでキレてたしね……まぁ良いんだけど。 俺の話を真剣な顔で聴いていた玲は、しばらく黙ったあと口を開いた。 「……だったら、なんで嘘ついたりしたんだよ?」 ……え。 あぁ、美央に「勘違いしてる」って言ったことか。そりゃだって… 「玲まで嫌な思いすることないから……俺が、勝手に玲のこと好きなだけだし…」 あれ?なんか珍しく卑屈な発言をしちゃったよ。 玲は何も返さずに箸を動かす。 今までで一番楽しくない玲との時間だった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |