ショート*ストーリー
☆
待ちに待った日曜日。
絶好のサプライズ日和だ!!
ちょっと小さめのケーキを作って、冷蔵庫に入れた。
テーブルの上には、ラッピングされた小さな箱。
買っちゃったよ……給料はたいて買いましたとも!!
玲の欲しがってた限定盤のCD。
早く玲の喜ぶ顔が見たいな…
「ただいま」
玄関のドアが開いて、愛しい玲の声が聞こえた。
「玲っおかえり!!あのね、実は今日…」
『玲の誕生日なんだよ』
そう言い掛けた俺の口がぽかんと開いたまま止まる。
玲の手に小さな小包が握られていたからだ。
俺の視線に気付くと玲は俺にそれを見せた。
「これ、日比谷さんに貰ったんだ。俺、今日誕生日だったらしくてさ」
玲の嬉しそうな声。
日比谷……!!俺より先にプレゼント渡しやがったのか!!
つーかプレゼントってなんだよ!?
やっぱりあいつ玲を狙ってるのか!?ライバルってことでいいわけ!?
ムカつく……サプライズじゃなくなっちゃったじゃん!!
って、この時まではそれくらいの落ち込みだったんだけど、すぐに俺は奈落の底に突き落とされることになる。
「そうそう、お前とこの前話しただろ?雑誌に載ってたアルバム。あれを譲ってくれたんだ」
「……は?」
「忘れたのかよ?ほら、俺が高くて買えねーって言ってた…」
忘れるわけないじゃん!!
だって必死に探して、給料はたいて…
そんな!!
玲が開いた小包の中身は確かに俺が買った物と同じ物。
先に、日比谷にもらっちゃったんだ…
そうだよな。元々日比谷の雑誌に載ってたもんだし、玲がこれを欲しがってたことも日比谷が知らないわけない…
「……湊?」
「……なんでも、ない…」
渡せるわけないよ。
どうしよう、すごい悔しい。
玲を笑顔にするのは、俺のはずだったのに…
「湊、本当になんもねぇのか?」
玲が本気で心配してくれてるのがわかって、頭の中がぐちゃぐちゃになった。
「良いっ……別に、なんでもない……うぅっ…」
「な……なんで泣いてんだよ!?」
「れ、玲がぁっ……誕生日、で…」
「……俺が歳食うのがそんなに嫌か」
そうじゃないだろう…
玲にボケに回られると俺つっこみづらいから。
すると玲がテーブルの方に歩きだしたので俺は急いで自分のプレゼントを隠した。
玲は全く気付いてない。
ケーキも……いいか。
今さらケーキくらいじゃ喜んでくれないよ。日比谷からもっと良い物もらったんだから。
俺は玲が見ていない隙に冷蔵庫のケーキをゴミ箱に捨てた。
一生懸命作ったけど……玲に喜んでもらえなきゃ意味ないもんな。
俺は涙を拭いて夕飯を玲に出した。玲は「なんか今日豪華じゃねぇ?」と言ってくれたけど、俺は「偶然だよ」と返すしかなかった。
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