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ショート*ストーリー

「玲!!」

気付いたら玲の名前を叫んでた。
玲は「またお前は…」とでも言いたげに俺を睨む。
すると黒ブチ眼鏡がにっこり微笑んで俺に挨拶してきた。

「こんにちは。日比谷聡です」

あんたになんか興味ねーんだよ…
そう思ったけど、言われたら俺も挨拶するしかない。仕方なく立ち上がって軽く会釈した。

「湯島湊です……この世で一番玲に近い存在です」

「誰がだっ!!」

玲に思い切り殴られた…
でも俺の方が玲と親密な関係だってアピールしたいんだもん。

「玲くんの恋人?」

「まさか。ただの居候です」

ヒドい!!俺の気持ち知ってて『まさか』って!!しかもちゃんと生活費は割り勘してるじゃん!!

「あぁ、君が同居人か。玲くんの専属シェフ?」

専属シェフ!?
馬鹿にしてんのか!?
玲に言われたら嬉しいけど、他人に言われるとすげームカつく…

「大変じゃない?毎日玲くんの朝ご飯作ってるんでしょ」

にっこり微笑む黒ブチ眼鏡。
やっぱこいつムカつく…

「大変じゃありません。生き甲斐なんで」

「湊!!良い加減にしねーと殺すぞ」

玲にもの凄く睨まれた。
俺よりこいつをとるのか、玲!!
黒ブチ眼鏡はおかしそうに笑う。
「本当に仲が良いんだね。あ、玲くんこれ雑誌」

そう言って渡したのは音楽雑誌。
玲は嬉しそうにそれを受け取る。
どうやら、2人の共通の趣味みたい。

……悔しい…。

「この人がインタビュー答えるの珍しいですよね」

「前回のアルバムでファンが増えたみたいだからね」

「あーあれ傑作でしたよね!!」

玲がこんなに意気揚々と喋ってるところ初めて見た。
俺といる時は極力無言だし…
珍しい玲の笑顔にキューンとすると同時に、泣きそうになった。


「じゃあまたね、玲くん。お友達も」

話が終わると日比谷は教室を出ていった。
なんだあの余裕の笑顔は……ムカつく!!

「すげー気さくな人だったなぁ」
日比谷がいる間ずっと黙っていた赤坂が呟く。

「湊……お前いい加減にしろよ」
うってかわって、玲は不機嫌顔になってしまった。
だって…
「玲、そんなにあの人と仲良いの?俺とあの人どっちが玲に近い?」

「うるせーな……なんなんだよ。てめぇには関係ねぇだろ」

玲があからさまにイライラしてるのがわかるけど、落ち着いていられない。
だって玲に一番近いのは、俺だと思ってたのに……あんなに仲が良い奴がいたなんて。かなりショックだ…

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