ショート*ストーリー
☆
「玲!!」
気付いたら玲の名前を叫んでた。
玲は「またお前は…」とでも言いたげに俺を睨む。
すると黒ブチ眼鏡がにっこり微笑んで俺に挨拶してきた。
「こんにちは。日比谷聡です」
あんたになんか興味ねーんだよ…
そう思ったけど、言われたら俺も挨拶するしかない。仕方なく立ち上がって軽く会釈した。
「湯島湊です……この世で一番玲に近い存在です」
「誰がだっ!!」
玲に思い切り殴られた…
でも俺の方が玲と親密な関係だってアピールしたいんだもん。
「玲くんの恋人?」
「まさか。ただの居候です」
ヒドい!!俺の気持ち知ってて『まさか』って!!しかもちゃんと生活費は割り勘してるじゃん!!
「あぁ、君が同居人か。玲くんの専属シェフ?」
専属シェフ!?
馬鹿にしてんのか!?
玲に言われたら嬉しいけど、他人に言われるとすげームカつく…
「大変じゃない?毎日玲くんの朝ご飯作ってるんでしょ」
にっこり微笑む黒ブチ眼鏡。
やっぱこいつムカつく…
「大変じゃありません。生き甲斐なんで」
「湊!!良い加減にしねーと殺すぞ」
玲にもの凄く睨まれた。
俺よりこいつをとるのか、玲!!
黒ブチ眼鏡はおかしそうに笑う。
「本当に仲が良いんだね。あ、玲くんこれ雑誌」
そう言って渡したのは音楽雑誌。
玲は嬉しそうにそれを受け取る。
どうやら、2人の共通の趣味みたい。
……悔しい…。
「この人がインタビュー答えるの珍しいですよね」
「前回のアルバムでファンが増えたみたいだからね」
「あーあれ傑作でしたよね!!」
玲がこんなに意気揚々と喋ってるところ初めて見た。
俺といる時は極力無言だし…
珍しい玲の笑顔にキューンとすると同時に、泣きそうになった。
「じゃあまたね、玲くん。お友達も」
話が終わると日比谷は教室を出ていった。
なんだあの余裕の笑顔は……ムカつく!!
「すげー気さくな人だったなぁ」
日比谷がいる間ずっと黙っていた赤坂が呟く。
「湊……お前いい加減にしろよ」
うってかわって、玲は不機嫌顔になってしまった。
だって…
「玲、そんなにあの人と仲良いの?俺とあの人どっちが玲に近い?」
「うるせーな……なんなんだよ。てめぇには関係ねぇだろ」
玲があからさまにイライラしてるのがわかるけど、落ち着いていられない。
だって玲に一番近いのは、俺だと思ってたのに……あんなに仲が良い奴がいたなんて。かなりショックだ…
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