ショート*ストーリー
Asahi-2
『じゃあ俺が直々に教えてやろっか?』
これは、賭けだった。
ユズは俺の嘘を受け入れて、俺たちの間に秘密ができた。
『朝日……キス、して』
その時は俺だって、一度で終わらせるつもりだったんだ。
だけどすぐ後に、ユズが彼女と別れたなんて噂を耳にしたから。
そして何より、ユズが二度目を望んだから。
『ユズ……キス、するか?』
三度目をすれば、後には戻れない。
これもまた、一世一代の賭けだった。
『……したい…』
ユズの答えに優越感とも満足感ともいえる感情を覚えた俺は、ユズの肩を掴んだ。
それからは、ためらいなんてなかった。
『ユズ、キスするか?』
そう問い掛けると、ユズは二つ返事で頷く。
これがどういうことか、俺だってわかってるし……ユズだってきっとわかってる。
だけど、そんなのを口に出してどうなるって言うんだ。
唇を重ねるたび、ユズは俺から離れられなくなる。その事実さえあれば、後はどうだって良かった。
「朝日……んん…」
そんな、ある日。
ユズの舌を舐めながらなんとなく目を開けると、ユズが下半身をモゾモゾと動かしているのに気付いた。
勃起してんのか……?
口を適当に動かしながらユズの体を見つめていると、ユズの手が動いた。手を股間の近くまで動かして、我に返ったかのように手を下ろす。
ユズが、オナニーしたがってる…
そう気付いてからこの計画を思いつくまで、一瞬だった。
「ん……あっ…」
ユズの呻き声にハッとした。考え事に集中して、ユズを気遣うのを忘れていたのだ。
「ユズ、大丈夫か?」
ユズが頷いたから、早々と俺は計画を実行することにした。
キスを終えて、いつも通りユズに別れを告げる。俺は携帯を目立たない場所に置いて部屋を出た。
足音がないとユズが不審に思うだろうから階段を降りて、一息つく。
ユズ……俺がキス以上のことを望んでると知ったら、ユズはどうするだろう。
これは、三度目の賭けだ。
俺は意を決して、階段を上ったのだった。
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