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ショート*ストーリー
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「お前なんかここ数日暗くねぇ?気持ち悪いんだけど」

そんなストレートに言わなくても……大体、玲のせいなのに。
そう、数日たっても玲は全くいつも通りだった。
忘れたフリ?と疑ってみたりもしたけど、どうやら本気で記憶がないらしい。

リビングで体育座りをしていると、玲が軽く蹴ってきた。

「シカトすんな。何があったんだよ」

「玲…」

玲が俺を心配してくれてる……玲、やっぱり好きだ。
玲も俺が好きだから、ああいうことしたんじゃないのかよ……?

「玲……俺のこと、どう思う?」
「は?」と言って眉間にしわを寄せる玲。
「だから、俺のこと男としてどう思う!?」

「……どうって……女々しい奴だと思う」

は?

「お前見た目は良いのに男らしさがねぇんだよ。彼女もそこに怒ってんじゃねーの」

そ……そうじゃない!!
第一、女関係じゃないし!!
なんでわかってくれないんだよ、玲…

「……湊?」

玲は俺の隣にしゃがみこんで、いつもより少しだけ優しい目で俺を睨む。
俺も玲を見つめ返した。

その途端…

目の前が真っ暗になった。

「……玲!?玲、どこっ!?」

「うっせー!!停電くらいで騒ぐな」

停電?確かに雨は降ってるけど……雷には気付かなかった。
ガスは使ってないから、大丈夫だよな…

玲はたぶん俺のそばでしゃがみこんだままだ。
慌てふためかないところが、男らしくてかっこいい……!!

「玲……そこに、いるの?」

手探りで玲の体を掴む。
あ、細い。たぶん、腕だ…

「なんだよ…」

玲は珍しく俺の手を振り払わない。
いざというときは、優しいんだな…

「玲……怖いから、こっち向いて」

本当はもうそんな怖くないけど……目、慣れてきたし。
玲はため息をついて
「ガキかてめーは……めんどくせぇ」
と言いながら俺の方に体を向けてくれた。

玲の体が、顔が、すぐ目の前にある。
あの夜のことを思い出して、体が熱くなった。

「玲……キス、しよ」

気が付いたら、もう言い終えていた。
玲は目を丸くして俺を見る。

「何、言ってんだ?」

「だ、だって……二度目だよ」

どうしよう。

言ったら、玲は怒るかもしれない。
でも、少しの気持ちも無しにあんなことはしないよな?
玲も、俺に欲情してくれてたよな?
この関係を、変えるには……思い出してもらうしかないんだ。玲…

しばらく黙っていた玲が、ようやく口を開く。
「一回、したのか?俺、お前と…」
俺は頷いた後、停電してることを思い出して「うん」と呟いた。

「嘘だろ?妄想もたいがいにしろよ」

「本当だって……玲が、忘れてるだけで…」

玲は「あー…」と呟いて
「俺が酔っ払って帰ってきた時?」
と尋ねた。

「そう……です」

「まさか……最後まで、した?」

「はい…」

沈黙が痛い。
玲、思い出してくれるかな。
俺のこと、どう思って…

「……あっそ」

沈黙を破ったのは、玲の低い声だった。

「灯り点いたら、荷物まとめて出てけよ」

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あきゅろす。
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