ショート*ストーリー
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一睡もできなかった…
玲を起こす時間まで後30分。隣にはすやすやと眠る玲。そろそろ朝ご飯の準備をしなきゃ…
そっとベッドを抜けて、私服に着替える。
一応、昨日の夜お互いの体を拭いて、玲には下着だけ着せておいた。
……新婚生活みたいだな…
嫌でも顔がニヤけてきた。
だって、とうとう!!
玲と……一線越えちゃったんだ!!
昨日の玲の姿と声を思い出して、とうとう声を出して笑った。
俺、一生忘れないだろうな…
ていうか……今日から恋人でいいんだよね!?
目玉焼きが固まっていくのを見つめながら、玲との恋人ライフを想像した。
玲、起きたらなんていうかな…
初めはちょっと照れるだろうけど、『昨日は、気持ちよかったよ』なんて…
「てめえ起こしに来んの忘れてんじゃねーよ!!」
「いっ…」
てえぇ!!
振り返ると、回し蹴りをくらわした玲。
もう少ししたら行こうと思ってたのに…
「玲、俺フライパンの真ん前にいるんだけど……火傷しちゃうよ…」
「俺を起こすのも忘れるような奴は火だるまになって死んじまえ」
玲は飄々とした表情のまま自分の部屋に戻っていった。着替えるのかな…
えーと……いつも通りにしろってこと?
忘れてるとかじゃないよね?
まさか。体が覚えてるはずじゃん。
玲、ちゃんと喋ってたし。
そんなハズ…
「あー頭いてぇ……足腰もいてぇ」
朝食を食べ始めても玲の態度は変わらなかった。
「そ……そりゃあ、昨日のことがあったからじゃ…」
「昨日?……あぁ」
やっぱり!!ちゃんと覚えて…
「俺さんざん働いた挙げ句、泥酔したからな……二日酔いと筋肉痛か」
玲は1人納得してまた朝食を食べ始めた。
「れ……玲たん」
「殺すぞ」
「昨日の夜のこと……どこまで覚えてる?」
「あぁ?……上村さんの、車に乗り込んだとこまで」
待て待て待て!!
上村さんって誰だよオイってのは置いといて、帰ってからのことは!?
俺と……ヤったこと、覚えてないの?
「おはよー玲、みな……と?」
赤坂の笑顔が引きつる。
「玲、湊どうしたんだ?」
「知らねぇよ。朝、急に泣き喚きだした」
赤坂が心配そうに俺を見つめる。
「あかっ……ぐす、赤坂……授業、終わったら、話が…」
嗚咽混じりにそう言うと、赤坂は「わかったわかった」と俺を宥めた。
「それで、全部忘れちゃったのか!?玲の奴」
授業が終わって俺と赤坂は食堂へ移動した。
俺が頷くと、赤坂はコーヒーを一口飲んでため息をついた。
「あいついつもそうだよなぁ……ちゃんと口も足も動いてんのに、目が覚めると全部忘れてんだよ」
「そ、そうだったんだ…」
ショックだ……『酔った勢い』どころか、覚えてもないなんて。
どっちかっていうと、玲が誘ってくれたのに…
「それで……湊はどうすんの?」
「……わかんないよ…」
玲に言ったら、玲はどう思うかな。
まず信じてくれるかな。
言ったら思い出すとか……ないか。
追い出されるのは、嫌だ…
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