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ショート*ストーリー
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全身の力が抜けて、暫くの間気を失っていた。

うっすら目を開けると、俺はさっきまでと同じく図書室のテーブルの上に寝かされていた。

「……イノリ?」

辺りを見回しても、人影一つない。
……と思ったら、本棚の向こうからイノリが現れた。

「あ、朔ちゃん!!大丈夫?」

いつの間にか、俺もイノリもちゃんと制服を着ている。
でもそこまで気持ち悪いベタベタ感もない。
イノリがティッシュとかで拭いてくれたのかな…

「なんかいつの間に2限始まっちゃったみたい。ごめんね、朔ちゃん」

にっこりと微笑むイノリ。
本当に……さっきまでのこいつと、別人みたいだ…

……しちゃったんだ、こいつと…
しかも、あっちに攻められるなんて!!
ダメだ、いろいろ後悔してきた…
こんなにイノリがノゾミくんと違うなんて思わなかった。
こんなの……一生の恥だ。

とにかくこの部屋から出たい。
俺は急いで立ち上がる。
すると腰に激痛が来て、すぐに倒れこんでしまった。

イノリが「朔ちゃん、そりゃそうなるよ」と俺をからかう。

「か……帰る。言っとくけど、あんたとは、二度と会わないから」

テーブルにつかまりながらなんとか立ち上がると、イノリはキョトンとした顔で「なんで?」と尋ねた。

「なんでも」

イノリは図書室を出ようと歩きだした俺の腕を掴む。
振り返ると、相変わらず笑顔……かと思えば、眉を八の字にしたイノリ。

「朔ちゃん、俺は朔ちゃんのこと超気に入ったよ?また会いたい」

イノリは甘え口調で話す。
いくつ人格持ってんの?こいつ。

「お断りします」

「……朔ちゃん、俺から逃げられると思わないで」

その言葉を振り切って、俺は図書室を後にした。……言うまでもなく、痛くてすぐ千鳥足になったけど。

振り返る間際、イノリが薄ら笑いを浮かべた気がしたけど、とにかく今はこいつから離れたかった。

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