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ショート*ストーリー
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「ウケるねーこの学校図書室あんだねー」

「自分で言ったくせに知らなかったの?」

嬉しそうに頷くイノリくん。
やっぱり…
「顔はさておき、中身全然似てないね。ノゾミくんと」

俺がそう言うとイノリくんは「よく言われるー」と明るく返した。

「朔ちゃんも紺とあんまり似てないね」

「兄貴を知ってんの?」

俺たちは図書室の奥にあるテーブルの上に並んで座った。

「たまにうち来るからね。怖いからあんま喋んないけど……あれ、素なの?」

あれ?
あぁ、あのズレてるしゃべり方とかかな。

「兄貴は生まれつき変人だよ」

「だろうね。なんせあのノゾミといるくらいだし…」

それはこっちのセリフだろ。
あの変人兄貴といるノゾミくんが珍しいんだ。

そう言ったら、イノリくんにすごく笑われた。
お、やっぱり笑うとノゾミくんにちょっと近寄るね。

「紺も大概変人だけどノゾミも変わってるよ」

「例えばどこが?」

「例えば?例えば……男しか愛せない」

「……え…」

しばらく、呼吸することさえ忘れた。
俺の反応を見てイノリくんが「知らなかった?」と尋ねる。

「知ってる……俺の兄貴と、付き合ってる…」

擦れた声でそれだけ言うと、今度はイノリくんが目を丸くした。

「朔ちゃん、物知りじゃん」

昨日知ったばっかだけどね…
つーかノゾミくん兄によくカミングアウトできたな!!双子ってそういうもんなのか?

「あんたこそ、なんで知ってんの?」

「まぁ双子ですから。片割れのことは何だってわかるよ?これは恋人を見る目だな、とか」

「じゃあ、兄貴とノゾミくんは…」

「うん、気付かれたことに気付いてないかも。俺が気付かれたことに気付いてることに気付いてないって可能性もあるけどね〜」

やべ。今の全っ然わかんない。
それにしても、カミングアウトしたわけじゃないんだ。双子パワーすげぇな。
俺いくら兄貴を見ても『恋人を見る目』とかわかんないって。

横目でちらりと見ると、イノリくんと目が合う。
にっこり微笑まれると、やっぱりノゾミくんと重ねてしまう…

俺の体が、自然とイノリくんの方に寄っていく。
「何?」と笑顔のまま尋ねるイノリくん。
またしても自然と言葉が出てきた。

「それで……イノリくんも、そっちの人なの?」

イノリくんは俺の言葉に目を丸くした後、またにっこりと笑った。

「さぁ?弟の性癖に触発されるってのはちょっとダサいからなぁ……朔ちゃんは?」

イノリくんは言いながら俺の頬を触ってきた。

「俺は……触発されるタイプかもしれな…」

言い終わる前に、イノリくんの唇で口を塞がれた。

……手に入っちゃったかも。

『兄ちゃんと同じヤツ』。
正確に言うと、兄ちゃんが持ってるヤツの、レプリカかな…

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