ショート*ストーリー
歪なデッドリンガー
『どうしたの?ノゾミくん』
俺とノゾミを見分けられないなんて、朔ちゃんもまだまだだよね。
紺は見抜いたのにさ……あー悲しい。
「ただいまっ」
ノゾミが嬉しそうに帰ってきた。予備校の帰りかなんか知らないけど、そんなに紺と仲直りできたのが嬉しいかねぇ?
俺にはわかんねぇ感情だ。
あ、でも…
『俺、兄貴じゃないし……ノゾミくんはイノリじゃない!!』
これは嬉しかったよ。他の人に言われたら『当たり前だろ』ってムカつくとこだけど、朔ちゃんに言われたのは嬉しかった。
元々ノゾミの代わりに俺とヤったくせに、 あんなに嫌がるとは思わなかったな…
『イノリっ……イノリ!!助けてっ!!』
俺を呼ぶ時の、朔の声が耳に残る。
面白かったなー。朔ちゃん、どんだけ俺のこと…
「……何?イノリ」
ノゾミが不思議そうに俺を見る。
ホント、我ながら俺そっくりだ。
俺が死んでも、俺の代わりは全部コイツが務めてくれるんじゃないかとさえ思う。
その時、ただ1人だけでも『ノゾミじゃ嫌だ』って言ってくれる人がいれば…
「別に。なんでもねぇよ」
俺は、それで救われるんだろうか。
そうすれば、俺の思いは晴れるのか?
俺だけのデッドリンガー。
お前ならその答えを知っているんだろうか。
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