メイクビリーブ
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屋上の扉が大きな音を立てて開いたのは、その時だった。
「お前よく災難に遭うなぁ」
そう言って笑っているのは黒坂先輩。
そして黒坂先輩の前にはもちろん……東郷先輩がいた。
白髪が驚いて2人を見つめている。夏樹もポカーンって感じ。
そりゃそうだよな。
昨日はともかく、今なんで先輩がここにいるのか俺もわかんない。
「手を離せ」
東郷先輩の命令に、目の前の白髪がすぐその通りにする。苦しかった胸が解放された。
「中谷は返してもらうから」
言い終わる前に俺の体は東郷先輩に引き寄せられていた。
「じゃあな」
東郷先輩が俺の手を引いて屋上を出ようとした時、我に返った。
「なっ夏樹!!夏樹も…」
夏樹は呆然と屋上の床に座り込んだままだ。
「そいつは知らねぇよ。好きにすれば」
後半の言葉は白髪に向けられていた。
「なっなんで!!」
焦って聞く俺に、東郷先輩はニヤリと笑った。
「なんで?……お前が約束を破ったからだ」
一気に顔が青ざめた。
わ……わけわかんない!!
わざわざ屋上まで俺を助けに来てくれて、でも俺が約束を破ったから夏樹は助けない。
……わかんないけど、一つだけわかるのはこのままだと夏樹がやばいってこと。
「もう一度言う。条件は俺と付き合うことだ。お友達助けてほしいか?」
東郷先輩の質問に、選択肢はなかった。
俺がゆっくり頷くと、東郷先輩は
「今度こそ覆さないだろうな」
と念を押す。
「や……約束します」
小さく言うと、東郷先輩は満足したように頷いた。
「昴、こいつ預かってろ」
言うや否や、東郷先輩は踵を返して白髪に何か言うと、夏樹の手を引いて帰ってきた。
屋上を出て廊下に出ると、急に気が抜けた。
「チカラさん!!それに先輩たちも、ありがとうございますっ!!」
「君はホントこの学校に来るべきじゃなかったねぇ」
黒坂先輩が楽しそうに言う。
「あ、僕は栗原夏樹と言います。昨日転校してきました」
「俺は2年の黒坂昴です。東郷リュウの腰巾着とでも思っといて下さい」
なんか自己紹介始めちゃったよ…
「ほら、リュウも」
黒坂先輩が促すと、東郷先輩が口を開いた。
「……お前、中谷のこと好きなの?」
またそれ!?
夏樹めっちゃ困ってるじゃん!!
「チカラさんはとても優しくて大切な友達です……けど」
あ、夏樹俺のこと友達だと思ってくれてたんだ。ちょっと感動。
「……じゃあいいや。俺は東郷リュウ。別に覚えなくてもいい」
ちなみに、こいつの……恋人。
そう言われて背筋がゾッとした。
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