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メイクビリーブ

「……中谷?」
何度呼び掛けても、返ってくるのは寝息だけ。
寝たのか……やっぱり。

最後まで言えよ…
『俺って東郷先輩のこと…』
そこまで言われた時、俺は心臓の音がチカラに聞こえてしまわないかビクビクしていた。

チカラ、俺のことどんな風に思ってるんだ?
最低な奴って思ってんだろうな。
俺、ひどいことばっかしてるし。

だけど…
『キスしていいです!!』
チカラが、自分から俺にそう言ったんだ。
まだ、諦めるわけにはいかねぇ。

目の前で眠るチカラを見つめる。
体育座りから崩れ落ちたままだから、寝顔は俺の方を向いている。
「中谷」
もう一度呼び掛けても、反応はない。疲れてたのか?
……合コンだったから?

どうしても考えてしまう。好きな女ができていたら?そいつとはどこまでいったんだろう。キスとか、したんだろうか…

突然、ポケットに振動を感じた。
携帯?あぁ、チカラの取り上げたっけな。
ディスプレイを見ると知らない女の名前。
今日が合コンだったことからすると……合コンに来てた女か?
何連絡先交換してんだよ…

切ってやろうかとも思ったけど、どうせならこの怒りをぶつけてやろう、と考えて通話ボタンを押した。

『あ、もしもしチカラくん?』

チカラくんね…
「誰?何の用」

『あれ、チカラくん?チカラくんじゃない……ですか?チカラくんは?』

うるせぇ。チカラチカラって何度も呼ぶな。
「なぁ、チカラとどこまでやったの?」

『……え?』
女は『え?』を繰り返すだけで答えない。

まぁ、どうせ何もしてねぇんだろう。
「もう二度とチカラに電話すんな。チカラに関わったことがわかったらお前をぶっ殺してやる」

少しの沈黙の後、電話は切れた。
怒りに任せてそいつのアドレスも削除する。

「あーもう……監視カメラでも付けるか、こいつ…」

できることなら、体も心も縛り付けてやりたい。
俺のことしか考えられない脳にして、俺の声しか聞こえない耳にして…

ダメだ。俺やっぱおかしくなった…

チカラはそばで電話していたというのに相変わらず熟睡。
こういう純粋無垢な顔を見せられると……汚したくなる。

さっきのキスが脳裏に浮かんだ。

女みてぇな声出してたな…
同じ男とは思えねぇ。
まぁ……すげぇ興奮したけど。

「……やべ」
チカラとのキスを思い出していたら、勃起したのを感じた。

俺、どうしたんだろう…
男と恋愛なんて気持ちわりぃって、散々昴を罵ってきたのに。
今の俺はどの女と付き合った時より勃起しやすくなってる。
間違えたのかもしんねぇ。
開けちゃいけない扉だったのかもしんねぇな…

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