メイクビリーブ ☆ 東郷先輩の部屋の前に来て、もう2時間経った。インターホンを押しても出ない。居留守かもしれないけど… 待ってやる。 居留守しててもいつかは出てくるだろうし、出かけてるならいつかは帰ってくる。 それまで、何時間だって待ってやるぞ!! ……にしても、眠いな。 なんで俺がここまでしなくちゃ… 東郷リュウのバカ!!変態!! 俺のこと好きなんじゃないのかよ!? コンクリートに触れっぱなしの体が冷たい。『一生ここにいなきゃいけないかも』とか考えて、ちょっと泣きそうだ… その時、階段をあがる足音が聞こえた。 ……あぁ、絶対東郷先輩だ。 足音でわかる自分にちょっと引いてしまう… 階段の方を凝視していたら、ようやく東郷先輩の姿が見えた。 俯いたまま歩いているから、俺の姿には気付いていない。 制服着てる。学校来てないくせに… 東郷先輩だ。東郷先輩だ。 確かに、本物の東郷先輩だ… 東郷先輩はドアの近くになってやっと顔をあげた。必然的に俺の姿にも気付いたみたい。 「な…」 声が出てないけど、口の動きからして『中谷』と呟いた。 俺が『東郷先輩』と声をかける前に、東郷先輩は後ろを向いてまた来た道を戻ろうとした。 「東郷先輩っ!!」 俺が呼んでも東郷先輩は振り返らない。 「待って下さい!!」 こうなったら最終手段だ……ついこないだまでだったら現金いくら積まれても絶対できなかったけど、今なら全力でできる。 「待てって……言ってんだろっ!!」 俺はありったけの力で東郷先輩にドロップキックをかました。 ……けど、東郷先輩は少しよろめいただけ。 弱い!!俺、弱すぎる!! でも東郷先輩が『いてぇっ…』って言ったから良し。 「……中谷……大丈夫か!?」 東郷先輩は蹴った反動で倒れこんだ俺に駆け寄った。 くそ、蹴った相手に逆に心配されるなんて… 「俺に、言うことありますよね」 座ったまま尋ねると、東郷先輩はまた俯いた。 「……悪かった」 「何に対してですか?」 「電話……しなかったこと」 「それだけ?」 東郷先輩は少し迷っておそるおそる言う。 「……お前の精液、飲んだこと?」 「そ、それは今は良いです…」 「じゃあ、なんだよ?」 なんだその態度……もうちょっと考えろよ。 「『恋人ごっこ』とか言ったこと……とか」 「だって……お前はそう思ってただろ」 うーん……否定はできない。 けど、あんたは違うだろ!! 「まだありますよ。謝ること」 [次へ#] [戻る] |