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メイクビリーブ

「いませんね……」

青空の下に広がるコンクリート。そのどこを見渡しても、金と黒の頭はなかった。

「チカラさん、2年の教室に行ってみましょうか……?」

「……いいよ。夏樹、教室戻って早く食べよう」

お昼休みに屋上へ行って、また教室へ戻る。
もうこれで1週間たった。
初めの数日は『ケガが治ってないからかも』と言い聞かせていたけど、そんなこと言ってられなくなったな…

もちろん放課後のお迎えも1週間ない。
今日も夏樹と2人で帰ることになった。
「チカラさん、東郷先輩に電話してみては?」
夏樹は何度もそう言ってくれるけど、そんな気になれなかった。

だって…
『条件は俺と付き合うことだ』
『恋人ごっこは終わりにしてやる』
そうだよ、俺はやっとあの条件から解放されたんだ。ずっと嫌だったんだ。
やっと東郷先輩から解放されたのに……自分から会いに行くことない。

でも……なんか、スッキリしないよなぁ。

「チカラさん……本当にこれでいいんですか?」

「うーん……たぶん」

「……僕は、チカラさんと東郷先輩の2人が……憧れでした…」

……は?
「何言ってんの?夏樹…」

夏樹は冗談じゃない、と首を振った。

「東郷先輩はチカラさんをすごく大事にしてると思います」

「いや、ていうか……男同士じゃんか、まず」

「そういう問題じゃないです!!黒坂先輩は……『若いうちは何しても許される』って言ってました!!」

そんなわけないだろ!!
「夏樹……黒坂先輩の言うことあんま鵜呑みにしない方がいいよ」

「でも、チカラさんは東郷先輩のそばにいた方が幸せだと思います」

うーん……ダメだ。
俺やっぱ夏樹に弱いよ。
『会いに行こうかな』って考えてるよ。
かなり傾いてるよ。

「じゃ……じゃあ、今日電話してみようかな…」

「チカラさん!!」

「別にたいした用はないけどね!!あ、謝ってもらってないし…」

なんか、俺がすごい素直じゃない子供みたいだ…



だけど、夏樹が『憧れ』って言ってくれるとは思わなかった。
俺たちってそんな立派なもんだったか?
『東郷先輩は俺をすごく大事にしてる』とか。

まぁ、東郷先輩には何回も助けてもらったけど。
映画館デートの尾行付き合ってもらったし……
手料理振る舞ってもらったことも……あるけど……でも、そんな、たいした、ことじゃないし!!

はぁ……とにかく、帰ったら電話だ。

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あきゅろす。
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