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メイクビリーブ

俺は生まれた時から普通のどこにでもいる男だったけど、東郷先輩みたいな……見た目も目立つ、中身も頭が良くて強い、そんな男に憧れたりもした。

東郷先輩はまさに、俺のヒーローだった。
その一言で不良が止まる。その瞳で女の子が堕ちる。
そんな東郷先輩に必要とされることに、悪い気はしてなかった。



「お友達も一緒で安心だろ?」

「全然安心じゃないです!!夏樹は東郷先輩と全く面識がないんですよ!!意外でしょうけど!!」

「ふざけんな。お前らと東郷と黒いのと4人でよく帰ってるだろうが」

す……ストーカーか!!
夏樹は恐怖で何も言えないみたいだ。
俺、いつの間にコワモテに対して免疫できたのかも。

だから何だって話だけど。



「……結局、東郷先輩来ませんでしたね」
帰り道、夏樹が呟いた。
顔が『なんかあったんですか?』って聞いてる。
ケンカの原因……夏樹には、もっと言えない…

明日も来なかったら黒坂先輩に様子聞いてみようかな…
そんなことを考えていると、前から男3人組が近づいてきた。

知らない制服だけど、同い年くらいだと思う。
そして全員、いかにも不良って感じのいかつい顔ぶれ。
ちょっと……いや、だいぶ嫌な予感がした。

「なぁ、ちょっと話あんだけど」
真ん中の長髪がニヤニヤしながら話し掛けてきた。
「な、なんですか?」
俺はびくびくしながらも答える。
本当に話だけで終わるのかな…

すると長髪は突然俺の腹に蹴りをいれてきた。
「まぁちょっとついてこいよ」
このホラ吹きめ……初っぱなから話じゃないじゃないか!!

両サイドの男に抱えられて手足の自由が奪われる。
大声をあげたけど、住宅街に入ってしまったため誰もいなかった。
それでも少しの希望にかけて、俺は何度も助けを呼んだ。

「うるせぇな……ちょっと黙ってろ!!」

俺を抱えていた男に殴られたみたいだ。頭に大きな衝撃。

あぁ、もう抵抗できないな…

俺は気を失った。



目が覚めると、知らない建物の中にいた。建物と言っても中は工事道具だらけでボロボロ。
どうやらどこかの廃墟の中みたいだ。

俺は手足をロープで縛られていて身動きがとれないようにされていた。
刑事ドラマみたいだな……とぼんやり考えていたら、隣から呻き声。

「夏樹!!」
夏樹も連れて来られたのか…
……なんで?ただのカツアゲじゃないみたいだ。
誘拐?いやいや、うちお金ないし。
ていうか不良に絡まれたんだもんな。俺と不良を繋ぐラインはあの人しかいないんだけど…

「おい、あいつら起きたぞ。東郷はまだ来ねぇのかよ」

あぁ、やっぱり…

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あきゅろす。
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