メイクビリーブ
☆
夏樹の恋が始まるはずだった日曜日の映画館デートは、結局いつものメンバーが集まって終わった。
黒坂先輩と夏樹の秘密もあるみたいで、東郷先輩も少しだけ感付いてる。
東郷先輩の言う通り、俺って鈍感なんだな。
だけど…
『お前がお疲れさまって言って、終わらせてやれよ』
東郷先輩がああ言ってくれて、夏樹との友情はかなり強くなった気がする。
言ってることわけわかんないしド変態だけど、東郷先輩って本当はすごく頭がよくて優しい人なんだよな。
たぶん。
「チカラさん、おはようございます」
「お、夏樹おはよー」
「昨日は、すみませんでした…」
「まだ言ってんのかよ」
夏樹、謝ってばっかだな……まぁ夏樹らしいけど。
「でも、せっかくのデートをお邪魔してしまって…」
「で、デートじゃない!!なんで俺たちがデートしなきゃいけないんだよ!!」
確かに2人で映画観に行ったけど、後ろでエロいことしてたけど、断じてそんなんじゃ…
「でも、お二人は恋人同士ですし…」
「夏樹……前にも言ったけど、俺たちはワケ有りっていうか……好き同士とかじゃないんだ」
「確かにそう聞きましたけど…」
夏樹が見たことない真剣な表情を見せた。
「チカラさん、今でもそう思ってるんですか?お互い好きじゃないって」
……そう言われてみると、どうなんだろ。
とりあえず東郷先輩が俺をイジメたくて、あんなことを言ったわけじゃないことはわかった。
イジメでキスはできないもんな。
あと、体目的でもない気がする。
東郷先輩は確かにド変態だけど、なんだかんだ俺が泣いたらたじろぐんだよな。
……じゃあ、何?
『好き』なの?どこが?なんで?
わからない。
一方、俺は?もっとわからない。
心に霧がかかってるみたいだ。
前は起きるのは嫌だったくらい東郷先輩が苦手だったけど、今は何時間一緒にいても苦じゃない。
結局キスとかしちゃってるし。
東郷先輩の気持ちがちゃんとわかれば、俺の気持ちもわかると思うんだけどな…
たぶん。
「チカラさん?僕、言い過ぎましたか?」
気がつくと、申し訳なさそうな夏樹。
「え、いやいや……確かに、はっきりさせておくべきなのかなぁと思って」
もしくは、ずっとこのままでも良い気がする。どんな事情があろうと、俺は現状に満足してるし…
うーん、難しいな。ずっとこのままって無理なのかなぁ?
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