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メイクビリーブ
...☆
東郷先輩をなんとか引き離してトイレを出ると、映画はとっくに終わっていた。

「と……東郷先輩!!」
あんたのせいだと言わんばかりに睨み付けると、東郷先輩は
『昴が俺たちを置いていくはずがない』
とかわけわかんないこと言い出した。

「どういう意味ですか?」

「純度100%のお前にはわかるまい」

ミステリアス東郷リュウ…
とにかく夏樹たちを追わなきゃ。夏樹は今も桜ちゃんに対する苦しい想いを抱えているんだ…
映画館を出たら……喫茶店?この近くにあったっけ…

「チカラさん」
ありえないはずの声に振り返ると、ありえない人物。
「夏樹…」
「チカラさん、偶然ですね」

偶然と言う割に夏樹はあんまり驚いてない。
うーん……どういうことだ?
「いやーまさかリュウたちも映画デートしていたとはね」
黒坂先輩まで現れていよいよわけがわからない。

「いつ……いつ俺たちに気がついたんですか?」

「上映中。劇場のドアが開く音に振り返ったら、君たちじゃないのー」
黒坂先輩がニコニコと答えた。
なんだ……最初から知ってたわけじゃないのか。
「ていうか……桜ちゃんは?」
今日の主役の桜ちゃんが見当たらない。トイレ?

「お開きになりました。可愛い子だったんだけどねぇ、どうやら俺の中身がお気に召さなかったようで」
えっ……早!!
映画観ただけで嫌がられるって……どんなひどいこと言ったんだ!!
「な、夏樹は……それでいいのか?」
夏樹にとって黒坂先輩と結ばれなかったのは嬉しいことかもしれないけど、せっかくの繋がりが消えちゃうよな…

すると夏樹は俯いたまま「大丈夫です」と震える声で呟いた。
「だ……大丈夫じゃないんだろ?」
「本当に……僕は……良いんです」
ほとんど泣きそうな声で言葉を紡ぐ夏樹。俺も悲しくなる…
もしかしたら桜ちゃんのことまだ諦めてないんじゃないか?だったら…
「良くないよ!!だって夏樹は」
「中谷」という言葉に遮られた。

「東郷先輩…」
「そいつはそいつなりに頑張ったんだろ……お前がお疲れさまって言って、終わらせてやれよ」

終わらせる?俺が?
「夏樹は……夏樹はそれでいいのか?」
そう尋ねると夏樹は俯いたまま頷く。
「じゃ……じゃあ、お疲れさま」
そう言ったとたんに、夏樹が抱きついてきた。
よく見たら泣いてるみたいだ。
よしよしと頭を撫でていると、後ろで黒坂先輩と東郷先輩の会話が聞こえてきた。

「リュウ、夏樹くん抱きついてるけど……怒んないの?」

「怒ってる。表面に出してないだけだ」

「寛大じゃないですか」

「まぁ、今回は特別だな。今日は俺も暴走したし…」

「えっ何があったの?」

「勃起するから思い出させんな」

こんな時に、最低だな…

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