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メイクビリーブ

日曜日、駅前。
「中谷……逆に怪しいぞ」
朝、家まで迎えに来てくれた東郷先輩と夏樹の姿を探していた。
尾行なんて初めてだから、どうしてもキョロキョロしてしまう…

「あっ夏樹!!」
人混みの中にやっと見つけた夏樹の隣には、見知らぬ女の子が立っていた。あれが桜ちゃんか…

茶髪でくるんとしたボブ。花柄のワンピースが女の子っぽくて…
「結構かわいいですね」
「なんだと!?」
思わず感想を呟くと、東郷先輩に睨まれた。
あぁあ、俺もかわいい恋人がほしかったなぁ…

しばらくすると見覚えある黒髪が2人に近付いてきた。
「あ、黒坂先輩も来ましたよ」
夏樹と桜ちゃんが頭を下げている。
「黒坂先輩、私服オシャレですね」
「中谷!!俺以外の人間を褒めるな!!」
無茶言うな…

遠くから見た限り、3人はとても楽しそうに喋っている。
いや……厳密に言うと夏樹は無理してる感じかも。やっぱり気を遣ってるのかな…

「夏樹……本当にお人好しですよね。早く帰りたいだろうに」
映画館に向かう3人を追いながら呟くと、東郷先輩から意外な返事。

「いや……そこは微妙なとこだろ」

「え?なんでですか」

「転校生、あの女が気になってんだろ?」

……えっ!?
「なんでそんなことが…」

「見た感じ」

信じられない……けど、そう考えたら夏樹があんなに悩んでた理由もつじつま合うよな…

「昴もそれに気付いてるからあんなこと言ったんだろ」
黒坂先輩……だから『紹介して』とか『夏樹くんも映画くらい一緒に』とか言ってたのか。

「それにしても、夏樹がかわいそうだ…」
今どんな思いで2人を見ているんだろう。
「まぁ……昴の考えてることなんか全部くだらねぇんだから、もうしょうがねぇよ」
東郷先輩が俺の頭を撫でる。

「つーかよ……お前、本当に鈍感だよな」

「そうですか?」

まぁ確かに夏樹の気持ちには気付けなかったけど……俺は結構鋭い方だと思うな!!




3人は、今はやりのラブストーリーを見るらしい。俺たちも追ってその映画のチケットを買った。
ちゃんと自分で買うつもりだったのに『首、噛むぞ』と脅されて東郷先輩におごってもらった。
くそ、借りを作っちゃったな…

「あ、夏樹たち前の方にいますよっ」
東郷先輩は全く興味がなさそうだ。
かと言って映画もどうでも良さそう。
なんで来たんだ、この人…

映画館はがら空きだったけど、尾行中の俺たちは1番後ろの席に座った。
「夏樹、大丈夫かなぁ…」
かと言って映画も気になる。
この主演女優、かわいくて好きだし…
なんて言ったら東郷先輩に殴られるか。

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あきゅろす。
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