メイクビリーブ ..☆ 目が覚めた時、夏樹が連れて行かれて既に5分が経過していた。 俺……弱すぎだろ!! 資料室って言ってたよな。 幸い資料室は2階。走って阻止……できるだろうか? 「……い、行くしかないよな」 蹴られた腹の痛みに耐えながら立ち上がった。 痛みと不安で、脚がガクガクする… 「おい、大丈夫かぁ?」 後ろから呑気な声が聞こえた。 振り返ると軽快なリズムで歩く長身イケメンと、不機嫌そうに隣を歩く…もっと長身のもっとイケメン。 「あ…」 今思うと、この時の俺は藁にもすがりたい気持ちだったんだ。 夏樹を助けたい、一心だった。 「た……助けてください!!」 俺は慌てて2人に駆け寄った。 俺に声をかけたのは、黒い短髪の地味な身なりに反して全校生徒から一目置かれている存在。 2年の黒坂昴だった。 そして黒坂昴が一目置かれている理由がこの隣の金髪。 同じく2年の東郷リュウ。 スラッとしてる癖に学校一の強さを持っていて、本格的に悪い人たちと繋がってるという噂もある。 「……スバル」 東郷リュウが口を開いた。怖い。 「なんで?困ってるじゃん」 黒坂昴が俺を指差す。 「困ってます!!友達が、不良に連れて行かれちゃって…」 99%ありえない話だけど、俺は1%の可能性に賭けた。 もしこの人が、学校一強いことで有名な東郷リュウが、一度でも『やめろ』と呟けば… 不良たちは絶対にやめる。 「お願いします!!夏樹を……助けてください!!」 東郷リュウは少し考えた後、急に 「お前そいつのこと好きなの?」 と尋ねてきた。 「違います!!」 そんなわけないだろう!! くそ、こうしてる間にも夏樹が… 「条件がある」 東郷先輩が真面目な顔で言った。 条件?ってことは? 条件を飲めば、夏樹は助かるかも……!! 「いいか、言うぞ」 もう何を言われても頷く気だった。 何を言われるかなんて予想していなかったし、どっちにしろ絶対予想できない内容だった。 「お前、俺と付き合え」 「わかりましたぁ!!」 ……は!? 付き合う!?誰と誰が!? 混乱する俺に平然と 「よし、場所わかってんのか?」 なんて尋ねてくる先輩。 擦れ声で『資料室』と言うと黒坂昴と一緒に走っていった。 「……お、俺も行かなくちゃ」 とりあえず俺は、『条件』のことを頭の隅に追いやって2人の後を追った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |