メイクビリーブ
...☆
1週間が終わって、土曜日。
俺は最寄り駅前の広場に立っていた。
う〜……いざとなると緊張する。俺だけ全然盛り上がれなかったらどうしよう。
女の子にひどいこと言われたらどうしよう…
「チカラ!!久しぶりだな〜」
振り返るとユミとユミの友達らしい男が1人いた。
「久しぶり、ユミ」
「今日は来てくれてありがとな!!あ、こっちは友達の石川」
紹介された石川という人にペコリと頭を下げた。
「よろしく、チカラくん」
お〜なんかすごい感じ良い。大丈夫そう。
「チカラくんの通ってるとこ知ってるけどさぁ、全然イメージと違って安心した」
あぁ、不良校では貴重な非不良ですから…
合コンはカラオケで行われた。主催者であるユミの友達もすごく優しくて良い人だったし、女の子たちも俺みたいな平凡男に明るく話しかけてくれた。
それに合コンっていうからもっとみんな夢中で恋人探しすんのかと思ったら、ただワイワイ騒いでる感じ。すごい安心。
「チカラも歌えよ!!」
「いいよ……俺がそういうキャラじゃないって知ってるだろ」
そうだっけ?と笑うユミ。
ユミの歌聴くの久しぶりだな…
「チカラくん?面白い名前だね」
隣に女の子が座ってきた。
黒髪ストレートの小柄な子。かわいい。
「あー、全然力は無いんだけどね」
女の子が笑った。
俺が『力』ってもはや皮肉だよな。
東郷先輩なんか似合いそう。東郷先輩はなんで『リュウ』って名付けられたのかな…
「チカラくんはどんな子がタイプ?」
おー、なんか合コンっぽくなってきた?
「なんだろ、おとなしい子とか?」
「ありがちな答えじゃーん」
『おとなしい子』か……でも今付き合ってんのは学校一強い男なんだよな。
尻揉まれたくらいで蹴りまくるし……
いや、あれは俺のためだったんだけど。
大体、東郷先輩は…
……ん?
その後も何人かの女の子と話をしたけど、たまに東郷先輩の顔が頭に浮かんできた。
やっぱり一言なんか言ってくればよかったかな…
まぁ合コンは楽しかったから良いけど。
「じゃあまた集まろうなー!!」
カラオケを出て解散。結局、初めに喋った黒髪ストレートの子と流れで連絡先を交換してしまった。
あぁでも、高校生っぽいことしたよな、俺…
「チカラが楽しめたみたいでよかったよー。駅まで一緒に帰ろうぜ」
小さな声でユミが言った。歌い疲れたみたいだ。
「うん。ユミ、誘ってくれてありがとな」
歩きだそうとすると女の子2人が
「あたしたちも駅行くんだぁ」
とついてきた。黒髪ストレートの子と、その友達。
帰り道は4人で中学時代の思い出を語った。
頭の隅で、『東郷先輩はどんな中学生だったのかな』なんてずっと考えていた。
月曜にでも聞けばいいや。
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