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メイクビリーブ
...☆
「……今日は、誰にも絡まれなかったか」

「あ、はい……夏樹は相変わらずモテモテですが」
ようやく東郷先輩の方に顔を向けて答えた。
「そいつはどうでもいいけど……お前なんかあったらすぐ俺を呼べよ」

「夏樹のこと……嫌いですか?」
元々合わなさそうだけど、特にこの2人ってほとんど喋んないんだよなぁ。
「別に……興味ねぇな。女みてぇに綺麗な顔してるとは思うけど」

「……あぁ…」
……びっくりした。東郷先輩も人のこと褒めたりするのか…
なんかすげぇ違和感。綺麗だって、夏樹のこと。なんか、変。

「嫌いになってほしいのか?」

「まさか。仲良くしてほしいですよ、自分の友達と自分の恋人……は?」

あ?俺、今なんて言った?
思い返す前に東郷先輩に肩をがっしりと掴まれた。
「中谷!!い……今、俺のこと……恋人だって…」
……やっぱり、言いました?

受け入れたことは受け入れたけど、まさか自分から口にする日が来るとは思わなかった。

「いや、あの、今のは違うんです」
俺が必死にごまかしてると、東郷先輩が肩を掴む力を強める。

「先輩……肩、痛いです」

「約束したからな……変なこと、しないって」

意味がわからなくてただ東郷先輩を見つめていたら、東郷先輩は見たこともない色気のある目で言った。

「我慢してるんだ。お前を、抱きしめるのを…」

震えているのは東郷先輩の手だろうか、それとも俺の肩だろうか?

東郷先輩の感情を制止しているこの手を解いたら、東郷先輩は俺を抱きしめるんだろうか。
抱きしめたら東郷先輩は喜ぶんだろうか。
俺の心臓は、どうなるんだろうか?

俺は心に浮かんだこの疑問を、実現することも打ち消すこともできずにいた。

「……中谷って」
俺の肩をつかんだまま、東郷先輩が口を開いた。
「目が、茶色いんだな……」

「は……はぁ。そうなんですか?」
自分で意識して見たことないからわかんない。
ていうかなぜ今それを…

「肌、白いし…」

「はぁ。中学はバレー部でしたから…」

ふと気がつくと、東郷先輩は俺の首の付け根辺りをじっと見つめていた。
「俺の首……なんか付いてます?」

「……いや、」

『噛み付きたいと思って』

その言葉を聞いた瞬間、俺はすぐに立ち上がって夢中で自分の鞄をひっつかんだ。

「中谷!?」

「お、お邪魔しましたっ!!」
そう言って俺は東郷先輩の部屋を飛び出した。

東郷先輩に掴まれていた肩がまだ少し痛む。
なんで『恋人』なんて呼んじゃったんだ。
なんで『抱きしめるくらいなら』なんて思っちゃったんだ。

東郷リュウは、やっぱりただの変態だ…

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