[携帯モード] [URL送信]

メイクビリーブ
.☆
『……はい』
俺の期待に反して、間違いなく東郷先輩の声が聞こえた。
とりあえず答えなくちゃ…

「東郷先輩、中谷です」

『……チカラ?』

突然名前で呼ばれて、ドキッとした。
他に『中谷』って苗字の知り合いでもいるんだろうか?

「あーそうです。中谷力の中谷です」

少しの沈黙の後、インターホンが切れた。
「東郷先輩、大丈夫でしょうか?」
「さぁ……とりあえず開けるとかなんとか言ってほし…」
その時、大きな音を出してドアが開いた。見ると黒のスウェット姿の東郷先輩が目を丸くしてる。

「ま……マジで中谷だ。なんでここに?」

「あの……えっと、その」

俺は乙女か!!
でも緊張して上手く喋れない…
制服じゃない先輩が珍しくて、目も合わせられない。

すると夏樹が口を開いた。

「僕はここで失礼しますね、東郷先輩お大事に」
そう言うとマンションの廊下を引き返していった。
夏樹がいなくなると余計に心細い。

東郷先輩は訝しげな目で夏樹を見送った後、ドアに寄って隙間を作った。
「……上がれば?」

恐々と靴を脱いでお邪魔させてもらうと、中もやっぱり学生とは思えない広さだった。
良いとこ育ちなのか?東郷リュウ…

「あっあの俺、黒坂先輩にお見舞いに行けって言われて、それで来ました!!」

言いたかった言葉をやっと言えた…とスッキリする俺に、なぜか東郷先輩は怪訝な表情。
「お見舞い?俺の?」
「はい……だって、風邪ひいたんですよね?」
「ひいてねぇけど」

は?いやいや、黒坂先輩そう言ってたし。どうなってんだ?

俺が呆然としていると、東郷先輩が遠慮がちに言った。
「……はめられたか?昴に」

俺の脳裏にニコニコと笑う黒坂先輩の顔が浮かぶ。

黒坂先輩…
やってくれたんですね!!

「か……帰ります!!」
俺が慌てて立ち上がると、東郷先輩が引き止めてきた。
「はぁ!?帰せるわけねぇだろ!!せっかく中谷に来てもらえたっ…つーのに、よ…」

……なんだその言い方。
まるで心から……喜んでる、みたいな…

なんで俺が照れなきゃいけないんだよ!!
「とにかく帰りますから!!」
「ふ……ふざけんな!!絶対、変なことしねぇから!!」
「あ、当たり前でしょうそんなの!!」
「お前……俺たち恋人同士だぞ!?」
そんなの、アンタが決めただけだろう!!



結局、東郷先輩の家に残ることになった。
恨むぞ、黒坂先輩…

それに加えて……東郷先輩の発言もかなりショックだ。
『変なことしねぇから』って……言わなかったら変なことするつもりだったんだろうか。
俺、やっぱりセフレにされちゃうのかな…
今までの優しさは餌付け?
考えれば考えるほど、寒気がする…

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!