1 四天宝寺に転入してから1ヶ月。 クラスの女の子とは話せるようになった(と思う)し、自分でもなかなか馴染んでるんじゃないかと思う。 1つ、問題なのは未だに校舎内を覚えてないこと。 萌ちゃんとはぐれて1人になってしまったらもう教室には戻れない、気を付けなきゃ、と思っていた。 思っていたはずなのに、今現在わたしは1人。 つまり迷子という訳で。 どんっ 「っ」 「おわっ!」 1人でわたわたしていたら、ちょうど角のところで人にぶつかってしまった。 「わ、ごめ…」 「危ないやろが!気いつけや!」 「………」 ぶつかってしまった人は怒りを隠しもせずぶつけてきて、ちょっと怖い。 わたしが全部悪いはずはないとか思っているけど、言えない、怖くて。 「おい、無視か!」 「………、えっと、」 しかも彼の中ではまだ終わっていないらしく、解放してくれるどころか会話がまだ続くらしい。 「あの、ごめん、ね」 とりあえず謝ってみた。けど、あの、視線が痛い。すっごい見られてる。 ぶつかっただけでそんなに怒ってるんだろうか。 「…お前転入生か?」 「あ、うん。そうだけど、」 転入生っていうのは意外と知られているもので、この人は同じ学年なんだろうか。 「あれ、ユウジと会沢?」 「忍足くん!」 曲がり角から ひょこっ と出できたのは同じクラスの忍足くん。 見た目が金髪だから、最初はものすごく遠慮したかったが、性格は見た目を裏切る優しさなので、仲良くさせてもらっている。 「なんや、知り合いやったん?」 「いやいやいや」 この目付きが悪い人は、忍足くんの知り合いらしい。(見た目だけだとかなり近づきたくないコンビだ。) 知り合いというかただぶつかっただけで まだまともに会話をしていない。から、思い切り否定してしまった。(事実、だと思うけど) 「なんやねんこの失礼な女」 「会沢おもろいわー!」 目付きの悪い人は、思い切り睨んでくるし(ちょっと失礼だったかもしれない)忍足くんは大爆笑している。 「ご、ごめん…、えっと、?」 「一氏ユウジや」 「会沢奈佳、です」 「こいつもテニス部やねん、よろしくしたってやー」 この学校で男子テニス部というのはものすごい人気で。 白石くんも凄かったが、忍足くんの人気も凄かった。 そうなると、一氏くんも凄い人気なんじゃないだろうか。 正直、少し近づきたくない。 目立つのは苦手だし、一氏くんは目付きが怖い。 「え、」 「え、ってなんやねんこらぁ!」 「ふぇぇええ!仲良くしてくださいおねがいしますぅう!」 笑ってないで助けて忍足くん! 一氏くんと仲良くなりました (ユウくーん、こんなとこにおったん?) そのあと小春ちゃんとも芋づる式で会ったわけです |