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12月4日。
冬に入って、寒さがきつくなってきた時期。
特に、寒さが大の苦手な私にとっては耐え難いものだった。

寒さが厳しくなってきてからは、常にストーブで暖まっている保健室に入り浸りだった。
冬に限っては、保健室の先生にはよくお世話になるので 今は会議中の先生に変わって留守番中だ。

ガラッ

「お」
「あ」

入って来たのは、確かB組であるはずの仁王くん。
彼も、寒さが苦手らしく、冬は2人で保健室に入り浸っている。(初めて話したのも今年の冬。保健室で、だ。)

「なんじゃ、もう来てたんか?」

あからさまな方言の仁王くんの話し方を見た時は、転校生かとも思ったが、話を聞けば、あの有名なテニス部のレギュラーで中学の時から一緒の学校だったらしい。

「うん、寒さに耐えれなくて」

仁王雅治という男は本当に不思議なやつで、
最初は見た目から苦手意識があったものの、中身はそれほど怖くないことを知った。(見た目通りに真面目なわけではないが)

「今日も寒いの」

「雪、降るんだって、午後から」

第一に、真面目なわたしと仁王の組み合わせは不似合い過ぎて、接点があるほうが不思議なのだ。
なにより、見た目からの苦手意識は消えたが、仁王の不思議発言や行動に、いまだなれることはない。

「のぅ、」

「ん?」

「今日なんの日が知らんのか?」

「はあ、?」

これが良い例だ。
突然会話が変わったり、突拍子も無いことを言い始める。

…今日がなんの日、か。

「たしかE.Tの日だったと思うけど」

どこかで見た記憶をそのまま伝える。
こんな突拍子もない質問に答えるのは、わたしが根が真面目であるからだ。
質問に答えたのに、仁王は微かに驚いたような表情をした。(知っていたのが意外だったんだろうか)

「なんじゃ、それ」

ハハッと笑っている仁王。
わたしの答えは、予想外だったらしく、いつものなにかを企んでいる笑顔とは違う、素直に笑っていた。

「なんの日か知ってるかって聞いてきたからでしょ」

「ホントに、変なやつじゃの」

「仁王には言われたくないけど」

変人奇人の代表と言ってもいいような仁王に言われるのは心外で、仁王以上に変人を探すほうが大変だと思う

「そうゆうとこが変なんじゃ」

「まだいいますか。……あ」

仁王と会話しながら携帯を弄る。
聞かれて分からないなら調べてみればいい。(この真面目すぎる性分はもうどうにもならない)
一番手っ取り早い方法として、携帯で調べてみる。

「あ、…グレゴリオ暦で年始から338日だって。年末まで、」
「ホントに知らんようじゃの」

わたしの言葉を遮り、今日がなんの日か、と呟く仁王に若干苛立ちを覚えるが、まあいい。
わたしの答えはまた、仁王の予想とは違っていたらしい。

「じゃあ聞くけど、今日はなんの日?」

それだけ意味有りげに言われれば気になってしまうし、仁王がそれだけつっかかってくるのだからなにかそれなりに考えがあるのだろう。

「俺の誕生日じゃけど」

「…へえー」

返ってきた答えは意外、というか 結構普通なんだけど、相手が仁王だからその答えは意外、で

仁王はわたしの反応がつまらなかったらしく、つまらん、と呟いている。(おめでとう、と言ってあげれば良かったのか)

「あー、うん。誕生日、おめでとー」

「適当じゃー」

一応おめでとう、と伝えた。が、仁王が普段そんなことを気にするような性格でもないので、そちらの気持ちも仁王に伝わってしまとたらしい。

「や、適当なわけじゃ…」

決して。ただ仁王にも案外子供らしいところがあったのかと驚いただけで

「放課後デートせんか?」

「は?」

仁王に気持ちを伝えようと言葉を並べているのに、仁王は聞きもせずまたわたしの言葉を遮った。
それも、今までで一番の天然発言を残して。

「ちょうど部活もないし。ええじゃろ?」

「いやいや、」

なんで仁王くんの誕生日にデートしなきゃいけないんだ。

「決定じゃ」

「え。」

断ろうとしている最中なのに、仁王はまたも遮って、決定だと言い放った。
なんでわたしなのか。保健室でしか接点なにもないのに。
むしろもっと可愛い子を誘いなさい。

「いやいや、放課後は予定あるし」

「俺とのデートより大切な予定なんでないじゃろ」

放課後に予定があると伝えても、どこから出ているか分からない自信の仁王に即答される。

「先生に頼まれごとされてるの」

「おお、流石委員長様じゃの」

委員長、なのだ。わたしは
まあその仕事もこの真面目な性分のお陰で苦でもないし、部活動をしていないのでその代わりだと思えば楽なもんだ。

「うん、だからさあ、仁王くんに付き合ってくれる子なんて沢山いるでしょ?」

部活の人とかさ、と呟いて座っていた椅子を片付けた。
そろそろお昼休みが終わる時間。教室に戻ろうかと扉に向かう。

「放課後待ってんしゃい」

「…冗談」

またいつもの詐欺まがいな言葉だと理解して、そのまま保健室を出た。

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