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「はああ、」
1月1日。またの名を元旦というおめでたい日に、これ以上のため息はないんじゃないかというため息をついているわたしは本当に今誰よりも不幸なんじゃないかと思えてくる(思えるだけなんだけど)
12月に、初めて彼氏が出来た。
名前は、忍足謙也くん。
初めての彼氏で、初めてクリスマスを2人で過ごして。
元旦も初詣に行こうね、と約束していた日だった。
いや、むしろ、今が進行形で初詣中だ。
年が明けて、初めて会う。初めてのお正月。
まだ寝ぼけてたお姉ちゃんを叩き起こして、着物を着付けてもらった。
我ながら、張り切りすぎかな、とも思ったがやっぱり謙也くんの前では頑張っていたいから、目一杯におしゃれをした。
もちろん、優しい謙也くんは可愛いと褒めてくれたし、その照れている表情はとても可愛いかった。
そんな謙也くんは、テニス部のレギュラーで、男女関係なく人気がある。だからこそ、謙也くんの前では可愛く居たいって思う。
「はあ、」
またため息が出る。
初詣もして、おみくじも引いた。(わたしは中吉。謙也くんは凶)
そして今は謙也くんがジュースを買いに行ってくれている。
謙也くんが居ないからこそ、ため息が出せるんだけど。
「あれ、奈佳ちゃんやん」
「え、」
名前を呼ばれて、顔を上げれば白石くんと小春ちゃん。(なんでこの組み合わせ?)
白石くんと小春ちゃんは、謙也くんの部活仲間で、それで知り合った。
「白石くん、小春ちゃん!」
2人とも仲良くさせてもらっているが、特に小春ちゃんは、服や食の好みもあっているので、大の仲良しだ。
「偶然やないの、こんなとこで会うなんてー」
小春ちゃんは、笑顔であけましておめでとう、と言ってくれた。
もちろん白石くんも、あけましておめでとう、と言ってくれた。
「会沢さんは謙也と来たんやろ?謙也は?」
「あ、今ジュース買いに行ってくれてんねん」
白石くんはキョロキョロと謙也くんを探しているようだが、まだ謙也くんは戻ってこない。
こんな人ごみだからきっと混んでるんだろうなあ、そう思ったらまたため息が出た。
「なんや元気ないんやないの」
「小春ちゃあああん、」
小春ちゃんは心配したように近づいてきつくれて、わたしが座っているベンチの隣に座った。
「謙也くんとなんかあったん?」
「ないねん、」
「え?」
「もうすぐ1ヶ月やのにまだ手も繋いでないねんっ」
そう。逆に無さすぎる。
もうすぐ付き合って1ヶ月。
別に急いでるわけじゃないし、初めてのことは大切にしたいけど 手を繋ぐ位してもいいんじゃないかと思う。
でも謙也くんはそんな素振り全然見せないし、わたしそんな魅力が無いんだろうか。
「なんや、そんなことかいな」
「そんなことちゃうよー」
小春ちゃんから言わせると そんなこと らしいが、わたしから言わせれば十分大切なことで(小春ちゃんみたいに男心が熟知出来れば…!)
「そんなん簡単なことやで?謙也くんはな、」
「あーーーー!白石たちおったーーーーーー!」
「金ちゃんや」
小春ちゃんが何か言いかけたところで、大きい金ちゃんの声がして、小春ちゃんが何を言いかけたのか聞けなかった。(やってほら、一氏くん睨んでるし)
走りよってきた金ちゃんと一氏くんの後ろから、謙也くんと財前くんが歩いてきた。
「あれ、」
なんか、謙也くんが暗い?
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