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36話:「日本男児として当然の格好を……」










「じゃあ、またね」
「うん!」


男湯と女湯と別れる手前で、麻燐とメンバーは笑顔で別れました。
そして、いつものように麻燐は一人で湯船に浸かる。


「……ふう、あったかーい…」


気持ち良さそうに首まで浸かった。


「……眠い、」


そのまま眠りそうになってしまうのを堪え、麻燐は素早く風呂場から出ました。
やっぱり一人は寂しいのでしょう。


「……あれー?」


女湯から出てみるも、まだ誰の姿も無かった。
麻燐はまだ皆が入っているのだと気付く。


「まだかなー……」


麻燐は待っている間、近くの椅子に座りました。

そして5分後、


「いい湯だったな」
「そうだね。疲れなんてもう感じないよ」


談笑しながら同室のメンバーが出てきました。


「あ!おかえり!」
「やぁ麻燐、早いね」
「うん、いつもこのくらいだよ!」


まだ濡れている麻燐の髪にそっと幸村が触れる。
それをくすぐったそうに麻燐は笑った。


「あれ………弦、ちゃん?」


だがそれは少し後ろの人物を見るとともに消えた。
麻燐は目を細くして真田を見る。


「……何だ、俺の顔に何かついてるのか?」
「あ、良かった〜。弦ちゃんだった!」
「俺かどうかを確かめていたのか」


真田は落ち込み気味。
文字通り肩を落とします。


「ふふ、お風呂上がりで帽子を被ってないからだよ。真田の存在の3分の2は帽子だからね」
「……そ、そうだったのか」


納得しちゃだめですよ!
大丈夫です。
麻燐ちゃんは真田の声を聞いて真田だと判りましたから。


「でも、帽子被ってない方が怖くないよ!」
「……それも複雑だな」
「帽子だと目つきが悪いみたいに見えるからね」


特に真田の場合は、と幸村がにこやかに言う。


「……いや、っていうか……服装にも問題はあるんじゃないのか」


跡部が眉を寄せて言う。
それにも一理あります。
真田はパジャマではなく、和服。
まさに和≠ナすね。


「かっこいいよ〜?」
「む……。だ、だが、これはお洒落の為などではない!日本男児として当然の格好を……」


少し動揺している様子の真田。
幸村は気に入らないみたいに真田を見る。
怖いですよ。


「でも、麻燐が一番可愛いよ。本当……誰にも見せたくないよね」


真田から話題をあっさり逸らし、麻燐をにこにこと見る。


「麻燐ね、パジャマ好きだからたくさん持ってるの!」


今日の柄は大人っぽくピンクのチェックですね。
苺、水玉、チェック……麻燐のパジャマコレクションはまだまだありそうです。


「ここで立っているのもなんだ。そろそろ部屋に戻ろう」


話を切り上げたのは手塚だった。
確かに、お風呂上がりの廊下は少し冷えるから部屋に戻った方がいいですね。


「そうだね!じゃあ、皆で戻ろうっ」


右手に手塚、左手に樺地の手を掴み麻燐は小走りで向かった。


「………どうして俺じゃないのかな」


後ろで幸村が嫉妬しているのを跡部と真田は見てない振りをしてそのまま麻燐たちについていきました。








「えーっと……」
「麻燐、さっきから何探してんだ?」


部屋に戻るなり鞄の中を漁る麻燐。
何か探し物があるみたいです。


「あ、んっとね……ぬいぐるみ…」
「ぬいぐるみ?」
「うん。麻燐がまだ小さい頃にママに買ってもらったの」
「「(麻燐の小さい頃……)」」


そこ、変な想像しない。


「あ、あった!」


麻燐が取り出したのは黒い猫のぬいぐるみ。
見つけたと同時に嬉しそうに抱きつきました。


「へぇ……猫か」
「うん!麻燐の家に居る猫の連くんとそっくりなんだよ!」
「ほう、猫を飼っているのか」
「そうなの!すっごく可愛いんだよ〜!ぶちょーは何か飼ってるの?」
「俺は何も飼っていない」
「そうなんだ?じゃあ連くんの子供ができたらあげる!」
「……そうか。ありがとう」


本当は家で動物を飼えないとは言えず、手塚は麻燐の気持ちを素直に受け取った。


「今日は連くんと一緒に寝るの!」
「ふふ、まるで俺の妹みたいだな」
「妹……?ゆきちゃん、妹がいるの!?」
「そうだよ。麻燐ちゃんと同い年の」


幸村は微笑んで言う。


「わぁ〜すごい!会ってみたいなぁ……」
「麻燐ならすぐに仲良くなれるよ」


またいつか会わせてあげる、と約束をし、各自ベッドについた。


「皆、おやすみ〜」
「「「おやすみ」」」


麻燐がベッドに横になったのを確認し、真田が電気を消した。

その日はそれぞれすぐに寝付き、夜はあっという間に過ぎて行った。













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