14話:「抜け駆けかにゃ〜?」 「青学の皆〜っ!ドリンクだよ〜!」 声は聞こえるものの、姿が見えず。 「あっ、麻燐!」 ドリンクを持っているので慎重にこちらに向かっていました。 零したらいけないですからね。 そんな麻燐の姿を見て、青学は自分たちから近寄りました。 「ったく、危ねーなぁ、危ねーよ」 「っあ、桃ちゃんっ!」 「ドリンクもーらいっ」 「英二もっ!」 そして次々と減るドリンク。 麻燐のトレイにはドリンクが無くなりました。 「ありがとう。重かっただろう」 「えへへ、平気だよっ!皆の為だから!」 「優しいね、麻燐ちゃんは」 「ありがとっ!」 青学でも褒められて、上機嫌な麻燐。 「うん。麻燐はいいお嫁さんになるよ」 「あはは、そうかな〜?」 「勿論。今度僕のところに花嫁修業に来ない?」 「修行?」 「「「不二(先輩)っ!!」」」 「くす。冗談なのに」 冗談に聞こえませんよ。 誰もが本気に取ります。 「……それより麻燐ちゃん。調理場に大きな果物を見なかったかい?」 「ん、果物……。あ、あった!えっと……ドr「いや、あったんならいいんだ」……ほぇ?」 「新乾汁の材料に使う予定なんだ。だから、あの果物の存在は気にしなくていい」 「いぬいじる……?」 「うげーっ!また乾が変なの作る気だっ!」 「勘弁してくださいよ〜…」 「ふっふっふ。大丈夫だ。今回は苦味と甘味の両方を加えバランスを保つつもりだからな」 「「「それが余計に不味いんだよ」」」 乾は分かってやってるに1票。 「……美味かった」 そんな中、トレイにドリンクのコップを戻したのは海堂。 今までで全部飲んでくれたみたいです。 「わあ、もう飲んでくれたのっ?ありがとう!」 「……つ、疲れてたからだ」 「今度っ、薫ちゃんのは少し多目にするねっ!」 「なっ……」 「おいっ、マムシだけずりーなぁ、ずりーよ。俺のも多目で頼むぜっ!」 「桃ちゃんも?分かった!」 「にゃー!俺も俺もっ!」 「英二もね?うん、頑張るっ!」 皆抜け駆けは許しません。 「……あれ?」 そこで、麻燐が何かに気付きました。 「ん?どうしたんだい、麻燐ちゃん」 「あのね…リョーマくんってどこにいるの?」 さっきから姿が見えない越前を心配する麻燐。 「ああ、おチビなら心配ないにゃ。もう少し向こうで打ってるって」 「まだリョーマくんの分渡してないのっ。麻燐、渡してくる!」 「あっ麻燐……」 麻燐ちゃんは、少し走ってコートに向かいました。 「……越前の奴…」 「抜け駆けかにゃ〜?」 「くす。いけないね」 そう言いながら、顔がにやけている先輩たち。 「はは…楽しそうだな」 「そうだね」 理由を知ってか知らずか微笑ましく見ている優しい人たち。 いい先輩たちですね! 「リョーマく〜んっ!」 「ん……?あ、あれって…」 コートに居た越前が麻燐に気付きました。 「リョ、リョマく〜んっ…」 「……横棒抜けてるけど」 「は、はい、ドリンク!」 「…あぁ、もう来たんだ」 汗を拭って麻燐の持っているドリンクを手に取った。 「………」 「………」 「………」 「………」 「………何?」 「ドリンク、美味し?」 にこっと笑って答えを待つ麻燐。 「……俺はファンタの方が好きだけど…」 「…ファンタ?」 「そ。グレープ味。炭酸の」 「うーん……」 麻燐は少し考えました。 「分かった!じゃあ、次からリョーマくんのドリンクにグレープと炭酸入れてあげる!」 「そんな事しなくていいから」 「え〜…そう?」 「そう。これでいいよ」 最後に一気にドリンクを飲んで麻燐にコップを返しました。 そしてまたラケットを持ってボールを打ちました。 「リョーマくんって凄いね!」 「…いきなり何?」 「だって、麻燐と同じ年なのに、レギュラーで強いなんてっ!」 「……まぁ、小さい頃からやってるし…。あんただって、よくあんな学校でマネやってられるね」 「?皆優しいよっ!お手伝いするの楽しいし」 「……ふーん。まぁ、頑張ったら?」 「うん!」 「………」 「………」 「…いつまでそこに居る気?」 「…あっ!まだ立海のところに行かなきゃっ!じゃあね、リョーマくん!」 「ん」 麻燐はトレイを持って急いで戻りました。 途中で何度かつまづきそうになっていました。 「……変なの」 越前は、少し笑いながら呟きました。 ←→ |