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02話:「そういえば、お前は初めてだよな」










「まぁ、皆ちゃんと宿題もできてたし、早々に良いスタートが切れたと思う」


ナオちゃんが教卓に両手をついて話す。
私はそれをぼけーっと聞いていた。
まだ夏休みボケしてるのかもしれない。
そういえば夏休みって言ってもずっと合宿で遊んでなかったなぁ。
ちょっともったいない気もするけど、これからがあるからいっか。
景ちんに頼んで何か奢ってもらおう。


「………てことだ。夏休みが明けたからって、気を抜いてるんじゃないぞ。未永、」
「な、なにっ!?」


急に呼ばれたことに少し変な反応をしてしまう。
私は目の前で細い目をして私を睨むように見るナオちゃんを見る。


「後で職員室に来い」
「え、ナオちゃん。新学期早々私に熱い個人授業をしてくれるの?」
「呼び出しだアホ。それに個人授業なんて俺はしたことねーぞ」


アホ!?
せ、先生がアホって……。


「教育委員会に訴えてやる!」
「次会うのは法廷だと思え」


こわ!
私の今のセリフは今まで何度もナオちゃんに言ってるけど、その度にナオちゃんの返しが上手くなってると言うか本気になってる気がする。
そしてそれだけ言って、ナオちゃんは教室から出て行ってしまった。


「おいおい、早速呼び出しかい」


侑士が少し呆れた口調で言う。


「でも私何も悪い事してないもん」
「あれだろ、夏休みの間に未永だけに出してた宿題の回収じゃね?」
「ああ!よし、それなら私のあの素晴らしい結果をナオちゃんに見せびらかしに行こう!」
「言っとくが、あれでも悪い部類に入るからな」


隣から聞こえる景ちんの嫌味は聞こえないふり。
私は宿題を持って職員室に向かう。


「こんちはー!ナオちゃん先生はいますか?」
「おいバカ。でかい声で俺を呼ぶなよ」
「ば、バカって……!」


本当にナオちゃんは私の扱い酷いよね。
他の女の子の生徒には爽やかな笑顔とかで接してるくせに。


「やっぱり見た目に騙される子が多いのよね……」
「くだらねえこと言ってないで、課題はやったか?」
「もっちろん!ほらこの通り!」


私はナオちゃんに課題を見せた。
それを受け取り、軽く目を通すナオちゃん。


「……どうやら、ちゃんとやったみたいだな」
「当たり前じゃん!………あんな状況の中、やらなかったら命がないもん…」


特に景ちんの迫力はすごかった。
今思い出しても怖くて、私の一生トラウマになると思う。


「まぁいい。で、もう一つは?」
「ん?もう一つ?」
「夏休みにやり遂げたものだ」


おお!
よくぞ聞いてくれた!


「はいはいはい!私は、夏休みの間弱音も吐かないであの合宿のマネージャーをやり遂げたことをここに宣言します!」


私は挙手をしてそうナオちゃんに伝えた。
すると、ナオちゃんは溜息をついて、


「あのなぁ、それはお前がマネージャーとして当たり前のことだろ?」
「でもでも、あんな7校も集まる大きな合宿なんだよ?」
「大体俺は、夏休みやり遂げた物≠チて言ったんだ」
「うっ……」


物って……まさか、そんな物体的な物が必要だなんて聞いてないよ……!


「でっでも、私頑張ったよ!今まで以上に皆のサポートできたよ!」
「………」


ぷくっと頬を膨らませると、ナオちゃんは出席簿で私の頭をポンっと叩いた。


「わかったわかった。よく頑張ったな。まさかお前が最後までやるとは思ってなかったよ」
「!?」


な、ナオちゃんがデレた!!
珍しいこともあるもんだなぁ……。
やっぱり、私が努力した時はちゃんと認めてくれる、先生らしいところもあるんだね。


「まぁ、夏休みの補習をサボったんだ。ちゃんとやってくれなきゃこれから毎日大量の宿題をプレゼントするところだったがな」
「………やっぱり鬼だ」
「何か言ったか」
「何でもないです」


ということで、私はナオちゃんから解放された。
ようやくこれで日常生活に戻る……!
懐かしい授業。
懐かしい授業中の亮ちゃんの横顔。
懐かしい景ちんの自信満々な回答。
懐かしい侑士の授業中のウインク。
………最後のははっきり言っていらないんだけど。
そんな私はいつも通り居眠りだ!!








「だーっ!こうやって屋上で昼飯食べるのも久しぶりだよな!」


お昼はいつもの習慣で屋上にテニス部員が集まった。
皆で丸くなってご飯を食べる。
これもなんだか懐かしいなぁ。


「でも、折角夏休み終わったばかりなのに、きついですね」
「そうやなぁ。いつものこととはいえ、慣れんわ」


ん?皆何を話してるのかな?


「なになに?何かあるの?」
「何って……未永、知らねえのか?」


がっくんが目を丸くして私に聞く。
なんだろ。
今皆が何を話題にしているのかさっぱり分からない。


「そういえば、お前は初めてだよな」
「え?何が?」
「何がって、今日渡部が話しとったやん」
「だから何を!?」
「まぁ、こいつは話なんか聞かねぇからな」


また景ちんが溜息をついて言った。


「俺いやだC〜!体育祭なんて、眠たいだけだC!」
「!?!?」


私はジロちゃんの言葉で気付いた。
皆の話題の中心が何なのか。


「た、体育祭……?」
「そうですよ。毎年、夏休み明けの1週間後にあるんです」
「そ、それってもしかして……リレーとか、やるんだよね…?」
「当たり前だ。体育祭だろ」


それは知ってる。
知ってる……けど、


体育祭なんて嫌だよおおおおおおお!


私は運動が全くできません!
だから普通の体育の授業でも嫌々、渋々やっているのに……。
5段階評価で1か2しか取ったことないのに……。
私はあまりのショックに叫んだ。

そうしたら「うるせえ」って景ちんに殴られた。
少しは気遣ってくれてもいいと思うよ!?













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