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139話:きっとその言葉が、また私たちを引き合わせる










私は立海のバスの影で大きく深呼吸をした。
もう他校の皆とはお別れしたし、後は氷帝の皆と帰るだけ。
そんな皆に心配をかけない為にも、いつもの自分でいなきゃ。

……よし!!
私は覚悟を決めてバスの影から身を出した。


「あっ未永ー!どこ行ってたんだよー」
「がっくん!いやぁ、ちょっと立海の皆と挨拶してたの」
「ったく、また立海かよ…」
「まぁまぁ…そんなに膨れないで?ねっ」
「…未永がそう言うんなら」


膨れたがっくんも可愛いけど!
そうやって素直に言った事を受け止める姿はなんて親孝行な息子なの!


「もうその設定皆さん忘れてますよ」
「あ、ピヨ。まぁいいじゃない。何年経ってもがっくんは私の可愛い息子だもん」
「なんて迷惑な。……それより、まだ挨拶しなきゃいけない相手がいるんじゃないですか」
「え、」


私はピヨの指差す方向を見る。
そこには、笑顔で私を見る女子マネの皆。


「あ、皆!今まで姿が見えなかったから先にバスに乗ってるのかと思ったよ」
「未永様に挨拶せずにバスに乗るなんてありえません!私たち、少し用意してたんです」


ねーっと女の子3人が顔を見合わせた。
……ああ、なんて可愛いの。
こんな妹がいたら私ももう少し大人しくなっていたと思う。


「え、でも用意って……」
「これです!」


そうして真ん中にいる朋ちゃんが見せてくれたのはテニスボール型のストラップ。
生地はフェルトみたい。


「あー可愛いっ!これ、どうしたの?」
「私たちで作ったんです。途中参加だけど、4人でマネージャーやってこれたっていうご褒美に」


杏ちゃんがウインクしながらそう言った。
もう私はそのウインクだけでもご褒美だよ。極楽だよ。


「その、杏さんに教わって…一生懸命作ったんです」
「桜ちゃん…ありがとう。嬉しいよ」


そう言って、恥ずかしそうに俯いている桜ちゃんの頭を撫でてあげた。
この子は本当に頑張りやだったから、きっとストラップを作る時も一生懸命だったんだろうな。


「これ、私たちでお揃いなんです。ですから、未永様もよかったらもらってください!」
「そんな…もちろんだよ、皆!本当に嬉しい!……でも、私は何にもしてなくて……年上なのに、なんだか恥ずかしいな」
「いえ、私たちが勝手にしたことですから。それに、未永さんからはもうたくさん元気をもらいました」
「あ、杏ちゃん…!」


なんて優しいことを言うんだ…!
これぞ、マネージャーの鏡!


「あ、ありがとう皆……私、絶対に皆の事忘れないから。また4人で遊ぼうね」
「はい!私も未永様の為ならどこまでも!」
「いつでも誘ってください。その時は、お勧めの場所を教えますから」
「わ、私も、また未永さんに会いたいです…!」


ああもう、この3人丸ごと氷帝に欲しい!
手離したくない!


「うんうん、また女の子4人、水入らずで会おうね!皆愛してるよ!」


そう言って、もうそろそろバスが待ちくたびれていると思いお別れをした。
思えば、こうやって女の子と協力してマネの仕事をやるのは今回が初めてだったから……。
色々と思い出に残る期間だったな…。


「別れは済んだか?未永」
「うん……まだまだ言い足りないけど、全部言ってたらキリがないからね」


これで本当に合宿が終わる。
皆とも、しばらく会わなくなる。
でもそれが本当の日常だから。
寂しいなんて我儘、言ったりしないよ。


「じゃあ俺達も、そろそろバスに乗りましょうか」
「ああそうだな。ほら未永、ぼーっとしてると置いてくぞ」
「あー皆待ってよ!」
「未永ー、俺の隣に来てよー」
「何言うてるんや!未永は俺の隣や!」
「じゃあ間を取ってピヨの隣にしようかなっ」
「俺まで巻き込まないでください」


なんて、いつもみたいに他愛のない話をしながらバスに乗る。
他のバスは私たちがバスを乗った頃にはもう出発をしていた。
バスの窓から、皆が顔を出して手を振っていた。
私もそれに応えてバスの窓を開けて手を振った。
身を乗り出しすぎて、隣の亮ちゃんに首根っこを支えられながら怒られたけど、
それも、明日になれば良い思い出。

皆にはさようなら≠カゃなくてまたね≠たくさん言った。
きっとその言葉が、また私たちを引き合わせる。
魔法の言葉みたいに。
そう、その言葉があるから、私はまた皆に会うことができる。
その運命の下、私はまた明日を歩むことができる。

だからきっと…ううん、絶対。
近いうちに会えるよね。


「………未永、」
「ん?なぁに、景ちん」
「さっきからぶつぶつ独り言言ってるが、」
「あ、もしかして聞いてたのっ!?」
「他校の偵察を口実に部活をサボる、なんてことはさせねぇからな?」
!?!?!?


どうやら私の考えはインサイトでお見通しみたい。
……って、私はそんなずるいことしないよ!


「正々堂々と会いに行くもん!」
もっとさせねーよ


景ちんは厳しい。


「いいじゃない!私だって皆に会いたいんだから!」
「だめだ」
「そうや!未永、自分には俺がおるやろ!」
「黙れ変態!」
「大丈夫ですよ。俺が未永先輩を自由にするわけがないじゃないですか」
「こわっ!かなり怖い!こんな怖い後輩だったっけ!?」

「っおい未永!ちったぁ静かにしろよ!」
「ごめんね亮ちゃん!あ、亮ちゃんが膝枕したら静かに安らかに眠れるかもっ!」
「は、はあっ!?ふ、ふざけるなよっ…」
「そうですよ。もしそんなことをしたら二度と目覚めることはないと思ってください」
「な、なんで私は死の宣告を受けてるんだろ……」

「くそくそ!俺も未永の隣がよかったのにー」
「……いつか全員まとめて下剋上だ」


その日のバスはいつも以上に騒がしかった。
やっぱり皆、合宿が終わって興奮してるみたい。
かくいう私もそうなんだけど……。

最後の最後まで、楽しく過ごすことができてよかった。
……少し、困らせちゃった人もいるけど。
でも、また絶対に笑顔で再会できる。

その自信はある!


「皆!」
「「「?」」」

「合宿、おつかれさま!」





これにて、7校合同合宿終了!!













あきゅろす。
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