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124話:「ったく……1から10まで面倒なやつだな」










夕食が終わったら、あれだね、うん。
ほら……いつもの………。

勉強が苦手な子へのお世話という名のいじm「夏休みの勉強がたまっている者の為の勉強会だ」

……そうでしたね、すみません。
だからそんなに睨まないでよ景ちん……。


「さて……あと残るは読書感想文……と、未永に関しては夏休みにやり遂げたもの……だっけか?」
「あ、うん」
「なんなんですか、それは」
「なんかね、担任が『お前は何事にも真剣に取り組める姿が見られないから夏休みの間に何か一つでもやり遂げてみろ』って言って、いつのまにか課題になってた」
「あー……渡辺(担任)ならあり得るなあ」
「そこまであいつに面倒かけてたのかよ」
「うーん、私普通にしてただけなんだけどなぁ……ね、亮ちゃん」
「普通だと思うんなら俺とお前のあらぬ噂を全て取り消してくれ」
「あ、あはは……」


切実な亮ちゃんの願いだった。


「じゃあまず読書感想文からだなっ」


がっくんがぴょんと飛び跳ねて言う。


「って、がっくんは終わったの?」
「ああ。俺は夏休み前に読んだ本だけど、結構印象に残ってたからそのまま感想にしたぜっ!」
「なんて要領のいい!未永ちゃんなんだか嬉しいよっ!」
「へへっ、エライだろー?」
「うんうん!」


なんだかがっくんがとってもできた子に見える!
合宿で成長したんだね……!


「お前はそんなこと言ってる暇ねえだろ?」
「そうでしたすみません!」


後ろで景ちんが怖い顔してるのがオーラで分かった。
一応私たちの為に開いてくれてるんだもんね……。
よ、よし、少し気合い入れよう……。


「で、なんか本は持ってきたか?」
「……持ってきてません」
「まあ、そんなことは分かり切ったことだ」


そ、それなら聞かないでよ……!


「でも心配しないでください!俺たちで未永さんにお勧めする本、持ってきましたから!」
「へっ?そ、そうなの!?皆がそこまでしてくれるなんて……」
「はいっ!これ俺のお勧めです!」





『人間失格』





「ううっ……私、チョタにどういう目で見られてるか、今思い知ったよ……」
「あははー、大事なのは内容ですよー?」


私は仕方なくチョタからその本を受け取って、目を通してみた。


「お、おおうっ……字が小さっ!!」
「読書、とはこういうものを読むことを言うんですから」
「うっ……わ、私これだめだ……それに、内容も難しそう……」
「そうですか……残念です」


チョタは本を受け取って少し下がった。
次に出てきたのはピヨ。


「活字がだめならこれも無理かもしれませんが……一応、俺のお勧めですよ」
「あ、ありがとう……」


『織田信長』か……歴史好きなピヨにぴったりだね。


「あっ……本当に字ばっかりだね」
「やっぱり未永さんには難しそうですね」
「ねえ、それよりピヨ、」
「……なんですか?」
「織田信長って、何した人だっけ?」
…………


ピヨは何も言わず、本を受け取って下がった。
あ、あれ?
私何かまずいこと言ったのかな……!?


「未永ーーっ!俺はこれや!今俺の一押しやで!」


『君の背中に翼があったなら』……。


「……侑士、これ、携帯小説だよね」
「そうや。感動するでー?この純愛ラブスートリー!ええか?あらすじはな、重い病気にかかってしまった女の子キャサリンを一つ先輩の頼りになる男ジョセフが……」


あらすじ語るな!!
その恋してるーみたいな表情で!
しかもキャサリンとジョセフって何!?
我が国のラブストーリーじゃないの!?
どこか別の国の話!?ねえ、そこだけ気になるよおおおお……。

いつのまにか侑士は強制終了させられて次に持ってきたのは亮ちゃん。


「あー……俺も読書はあんま好きじゃねぇからよ、こんなのしか……」


『夕日に向かってテニスでGO!〜第2巻〜』


「さすが亮ちゃん。テニスに関しての本を読むなんて!」
「う……字ばっかのは見てっと眠くなるから、絵とかあるこっちのほうが……ってな」
「ところで亮ちゃん、これ第2巻って書いてあるけど、第1巻は…?」
「………読んでねえ」
「え……」


これ、一応シリーズ物だよね?


「そーいや途中出てくる『謎の男』がなんで主人公の過去知ってんのかわかんなかったな……」
「……それでも読み続けた亮ちゃんが凄いよ」
「………悪い。や、やっぱこれはやめとくか」


亮ちゃんが本を引っ込めた。
大丈夫、そんな間違い、私は気にしないよ。
可愛いから!!


「宍戸のもだめだったのかー……俺もなんか本持ってくればよかったかなー?」
「がっくん……いいよ、元は私が悪いんだし」
「そうだ。お前が悪い」


なんかそう真っ直ぐ言われるとカチンとくるな……。


「俺様のなら文句ねえだろ」


『(解読不可能)』


「あの、まずタイトルからして読めないんだけど」
「あーん?お前、ドイツ語も読めねえのか」
「英語すら成績1ですよ!」
「というより、日本語も時々おかしいですよね」
「ぐさあっ!」


くっ……チョタの攻撃にも私、負けない!

景ちんの持ってる本が結構薄くていいかなーって思ったら……。
言葉が読めなければ意味ないっ……!


「ったく……1から10まで面倒なやつだな」
「私が日本語以外できないってこと知ってるくせにーー!」


私は景ちんに本を返して一人足を抱えて座った。


「あーあ、跡部のせいでいじけちまったじゃねえか」
「俺のせいかよ」
「え〜と……未永、元気出して〜」
「じ、ジロちゃん……」
「ほら、俺の本が残ってるC〜」


そういえばジロちゃんのまだ見てなかった……。
ジロちゃんから本を受け取ると、意外と暑さがなく、絵本くらいの大きさだと分かった。
ぱっと顔を上げて題名を見てみると、


『子羊と狼のお昼寝』


という本だった。
なんとも癒し系の匂い……!


「こっこれなら私でも読めるかも!」


早速本を開いてみる。
すると、


「「「…………」」」


中をのぞいた全員が無言になった。
これは……
これは、ある意味景ちんの持ってた本より解読が難しそう……。


「すげえな、この涎の海……」
「あはは、読書しながら眠っちゃったC〜」
「かっ可愛い……!だけど、いくら私でも……読めない、かも……」
「そっか〜……残念〜」


ジロちゃんはそういうとその本を抱えて眠っちゃった。
……これでまたあの本が読めなくなっちゃうのかなぁ。


「……って結局私何も読むものないーーーっ!」


もう落ち込むしかない。
いや、むしろ自分で物語を作るか……。
だめだっ!
私に国語能力なんて皆無に等しい!


「もうだめだ……」


力尽きてしまいそうだ……。


「ウス……」
「…およ?樺っち……」


ここで目の前に現れたのは皆の癒し系、樺っち。


「も、もしかして、樺っちも私の為に本を……!?」
「ウス」


頷いて、本を手渡してくれる樺っち。
私はそれを受け取って、題名を見た。


『フランダースの犬』


誰もが一度は耳にした事のある名作。
絵本よりは少し厚いけど、それでも字は大きくてところどころ絵がある内容。
私は一瞬にして樺っちが仏様に見えた。


「樺っちーーーーーー!!」
「う、ウス……」
「やっぱり樺っちが一番私のこと分かってる!これなら私読めるよ!大丈夫だよ!」


私は樺っちにお礼を言って言って言いまくった。
途中、樺っちが遠慮しているのか首を振りまくっていたけど、それでも私の感謝の気持ちは押さえきれなかった。


「未永、決まったんならさっさと読め」
「うん!」


私は早速本を開いて読み始めた。


「……ねぇ日吉、知ってる?」
「なにがだ?」
「あの本、いつも樺地が妹に読み聞かせしてる本の一冊なんだって。間違えて持ってきちゃったみたい」
「………え?」
「びっくりだよね。樺地でもそんな間違いするなんて」
「……いや、俺は妹に読み聞かせってとこが一番驚いたんだけどな……」


少し暇になったのか、周りの子たちが喋り始めた。
普段なら混ざりたいとか思う私も、樺っちの親切とパトラッシュを裏切れず、本を読むのに没頭した。













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