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わたしのすべて
「なんだ?」

「今日は、バレンタインの日でね。

お世話になってる人や好きな人にチョコを渡す日なのよ。」

「―…そうか。」

無表情なまま、泰明はチョコを受け取る。

不意に泰明の胸が痛む。

(…なんだ?)

泰明は目を閉じて自分の心に問いかけるが、答えが返ってくることはなかった。

「どうかしたの?」

心配した薫が泰明の顔を覗き込む。

再び、先ほどよりも強く、切なく胸が傷んだ。

「―…いや、胸が傷むだけだ。」

「え!?大丈夫?」

「違う…何か…。」

泰明の表情が歪み、引き寄せられるようにその瞳が…薫を見つめた。

「泰明?」

「―…。」

ただ薫から心のこもった何かを受け取るだけで動揺し、
ただ薫が自分を気遣う仕草だけで暖かな心地を覚え、
ただ薫に見つめられるだけで――…。

そう感じてしまう自分を、泰明は確かに知っていた。

(これが…感情なのか。)


お師匠がいっていた。

あの言葉の意味がわかる気がした。

暖かくて、苦しくて、かけがえのない想い…不思議な力。

泰明はお師匠に言われたあの言葉を口にした。

「愛しい…。」

「え?」

「これが…『愛』というものなのか。」

口にしただけで酷く安心した。

ただ薫が隣で聞いていてくれたからだろうか。

「わたしのすべてが、お前を欲している。

これが愛しい…というものなのか?」

泰明は自分に、薫に問うた。

薫はそんな泰明を見て、静かに首を縦にふる。

「えぇ、それが好きってこと。

私も泰明と同じ気持ちだから、わかるわ。」

「―…好きだ。」

「ん…私も。」

意識した途端に溢れ出して止まない感情。

ふいに、そんな泰明の手元のチョコを薫が指差した。

「―…チョコ、食べてみて?」

「あぁ、分かった。」

泰明は器用な手つきで包みを開き、チョコを口にした。

薫は静かにそれを見守る。

「どう?」

「不思議な味だ。」

「ふふっ…私の愛が入ってるからね。」

泰明はそうだな、と薫に同意しながらふっと微笑みを浮かべた。

優しげに薫を見つめながら微笑む泰明はとても綺麗で、薫は目を奪われた。

「どうした?」

「ぇ…いや、あの。泰明の笑顔が…。」

「私は今、笑っていたのか?」

「うん…凄く綺麗。

泰明の笑顔、私好きよ。」


薫は微笑み、つられてより一層の美しさを帯びた微笑みを浮かべる泰明。

「私もお前のその微笑みが…愛しい。」

「ありがとう、」

「薫。」

「ん?」

「また…作ってくれないか?」

「ええ、勿論!」

満面の笑みを浮かべて、薫が微笑む。

泰明は思わず薫を抱き寄せる。

――わたしのすべてが、お前を欲してやまない。


―――お前が教えた『愛』がわたいのうつほな心を満たしていくから。












うつほって言葉を使ってみたかった(殴。




おまけ(台本形式)


翌日。


泰明「薫。」

薫「どうしたの?」

泰明「チョコをもらいに来た。」

薫「…え?」

泰明「…昨日、頼んだはずだが。」

薫「ええと、あれはね。一応一年に一回の行事なの。」

泰明「そうか…。」

薫「(泰明が凹んだ…)…泰明。」

泰明「では、かわりのお前をもらおう。」

薫「は?」






チョコのかわりにキスされました
(薫談。

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あとがき






あきゅろす。
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