[携帯モード] [URL送信]
もっと私に近づいて
「ありがとう。」

帝が微笑みを浮かべながら薫からチョコを受け取る。

「―…つかぬことを聞くが、これは先ほど言った方の前者か後者か?」

帝の質問に薫は一瞬首を傾げたが、意味を理解して頬を紅く染めた。

「後者…です。」

緊張のあまり、敬語になってしまった自分が情けない。

薫は、緊張した面持ちで帝を見る。

「そうか。嬉しいぞ。」

ふいに薫の頭を撫でる優しい手。

帝が自分の気持ちを受け取ってくれたことがどうしようもなく、嬉しい。

「まさか、そなたから先に想いを告げられてしまうとは…私もまだまだだな。」

いつかは伝えようとしていた言葉を先に言われて、帝は苦笑した。

薫は、そんな帝の言葉に戸惑いながらも口を開く。

「えっと、チョコ食べてみてくれない?」

「うむ…せっかくだからな。」

帝は了解して包みを開く。

チョコを1つ取ろうとした帝を、ふいに薫が止めた。

「どうした?」

「ふふっ…食べさせてあげるわ。」

薫はいたずらっぽく笑う。

帝は少しだけ頬を染めて、頼む、と短く返事をした。

「じゃあ、アーンして?」

上目遣いで帝を見上げる。

(可愛い…。)

帝は不覚にも薫の顔を見とれた。

「―…。」

「ぁ…口開けてってこと。」

「そ、そうか。」

帝は恥ずかしげに口を開く。

「……甘いな。不思議な味がする。」

1つだけチョコを食べた帝の第一声はそれだった。

「そう?」

帝は感激したらしく、次も頼むと急かした。

「あの…。」

「なんだ?」

「出来れば…帝からチョコのご褒美が欲しいなぁ、なんて。」

遠慮がちに薫は帝に甘える。

再び薫に心を奪われかけながら、帝はゴホンッと心で咳払いしあくまで平然と装う。

「何が欲しい?」

「―…帝。」

「なっ…。」

帝もさすがに顔を真っ赤にする。

気づけば主導権は薫に握られていた。

とはいえ薫もそんな自覚を出来るほどの余裕はないのだが。

「もっと私に近づいて。」

気づけば、薫は呟いていた。

「あぁ、そうだな、」

帝は平静を保ちながら、薫に寄り添い、愛しげに抱きしめる。

チョコの甘い香りが二人を包んだ。

「では、私からそなたへのバレンタインの贈り物を。」

そう言って帝が薫に口付けた。

先ほど食べたチョコの味がした。

甘い甘いキス。

「――…ん…もっと。」

薫はせがんだが、帝はそんな薫の髪を撫でながらふっと微笑みを浮かべる。


「では、そなたからチョコを食べさせてもらう毎にそなたにも礼をしよう。」

「ん…分かったわ。」

そうして、チョコの香りに包まれながら二人のバレンタインによる愛の贈り合いが続いた。


――…このまま、甘い香りで私を酔わせてくれまいか。













帝!リクエストに沿ってみたんですが、なかなか難しいですね。

バレンタインアンケート
⇒帝ルートに一票!





あとがき









あきゅろす。
無料HPエムペ!