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誰でもいいわけではない
「私がもらってかまわんのか?」

「うん、」

グウェンダルはいつもの表情のまま、無言でチョコを受け取った。

この場合、喜ばれているのか否か判断しづらい。

(本命だって、いったほうが良いよね。)

こめかみに伝う汗をぬぐいながら、薫はグウェンダルを見上げた。

「グウェン。」
「カオル。」

二人の声が重なった。

「何?」

「いや、お前が先に…。」

「いや、グウェンが先で…。」

などと譲り合いをしていると、途中でグウェンダルが折れて、咳払いの後にこういった。

「なぜ、私に?」

愚問だ、好きだからに決まっている。

しかし、グウェンダルに見つめられると薫はのどに何かがひっかかったように、言葉をうまく話せなかった。

「…カオル?顔が赤いぞ。」

グウェンダルが心配げに、薫を見る。

(どこまで鈍感なの!)

自分も決して鋭いとはいえない…むしろ鈍感な方であるが、グウェンダルが全く気づいてくれない上に素で薫の額に手を当てようとするので慌てて大丈夫だといった。

「好きだから!」

「何?」

「好きだから、グウェンに渡したの。

好きだから、グウェンを見てると顔が火照っちゃって。

その、だからそのチョコは本命…で。」

われながらまとまりのない、グダグダな告白の仕方だと思った。

しかし緊張しきったこの状況では薫にとって、コレが精一杯だった。

「そうか。」

かわってグウェンは短い返事で答えただけだった。

果たして、肯定か否定かまたしてもわからない。

しかし、グウェンダルの頬がほんのり赤いことだけが唯一の救いというべきか。

とりあえず無碍に断る気はないのだと思う。

「グウェン…私。」

「わかっている。」

「え?」

「いや、私も少し動揺してしまったようでな。」

ゴホンッと咳払いをしながら話すグウェンダルはあくまでも平然と装うと必死で、なんだかそれがちょっとおかしい。

あくまでも威厳を保とうとするグウェンのその姿勢は、長男ゆえのものなのだろか。


「いいわよ、動揺したって…。

私だって、心臓飛び出しそうだし。」

「何!?それは大変ではないか。」

「バカね、比喩よ。」

動揺するとこうも天然になれるものだろうか、グウェンの天然突っ込みの新鮮さに薫は感動した。

グウェンダルはといえば先ほどの言葉が少し恥ずかしかったのか、薫をまっすぐに見つめようとしない。

「でも、良かったわ。」

「何がだ?」

「だって、さっき言ってたじゃない?

何人かに受け取ってくれとか言われてたって…。

だから、ちょっと不安だったの。」

「バカだな。」

「なっ…。」

はっとしてグウェンダルを見れば、優しげなその面差しが瞳にうつる。

「先ほども言っただろう。

誰でも言いわけではない。

私は、お前だから受け取ったんだ。」

グウェンダルの言葉は、いつも重みがあって安心できた。

今もそう、薫の心に響いて、厚くなって溶けていく。

「カオル。」

「ん?」

「愛してる。」





――私にとって、忘れられない日になる。

―――お前がただ、そばにいるだけで。












あとがき


なんだコレ!?グウェンは相変わらず苦手なんだぜorz
いや、でも愛はありますよ!!





おまけ(台本形式)



グウェン 「これは、ねこちゃんか?」

薫「そうそう、可愛いでしょ?」

グウェン 「まさかチョコの形がこんな形になっているとは…。」

薫「どうかしたの?」

グウェン 「……(チョコとにらめっこ中。」

薫「不味かった?」

グウェン 「チョコの形が可愛い過ぎて、食えん。」

薫「……。」







今度からは普通のチョコをあげよう(薫談。


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あとがき







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