A−4
「はい。」
「ありがと。」
よく考えればクラスメートなのに、友チョコすらあげる仲ですらなかった。
眞魔国を知り、『騎士』という過去を知り、『大賢者』というクラスメートを知った。
不思議な縁…それは偶然という名の必然。
「どうかした?」
「ううん、不思議だなぁと思って。
あのまま、村田君とただのクラスメートだったらこんなことしてないし。」
「そうかもしれないね。
眞王に感謝しなくちゃ。」
「そうね…そんなこと言うと図に乗りそうだけど。」
「確かに。」
そう言って笑いあった。
クラスメートとして、友達としてかけがえない人。
(それ以上は踏み込めなかったか…。)
村田は1人、胸の奥でため息を洩らした。
「薫。」
「何?」
ふいに村田が移動して、薫を噴水近くまで手招きした。
「何かあるの?」
薫がそう言った瞬間だ。
「君の本命のところに行ってきなよ。」
村田がとんと薫の背中を押し、見事薫は噴水に落ちた。
そして底無しの噴水の水に呑まれ、やがて細い一筋の光へ向かう。
(これってまさかスタツア!?)
薫はそう思って、 たどり着いた先の水上に顔を出した。
地球に帰ってきたと思った薫。
ところがどっこい、薫がいるのは地球ではなかった。
(えっと何処?)
辺りを見回しながら、濡れ鼠の自分を見た。
防水加工済みのチョコはどうやら無事らしい。
「誰かそこにいるの?」
ふと高くて澄んだ美しい声が耳に届く。
忘れもしない、見目麗しき美少年ことサラレギー陛下が今、薫の目の前に現れた。
「カオル?」
「あはは……サラ、久しぶりね。」
とりあえず笑ってみた。
(上手く笑えたかな?)
いきなり小シマロンのサラレギー陛下の庭の池に現れるなんて、不法侵入もいいところだ。
無理矢理ながらも送ってくれたことには感謝するが、それにしてはあんまりだと薫は思った。
「くしゅん。」
「大変。早く着替えないと、ベリエス!」
いったいいつからそこにいたのか、ベリエスがスッと現れた。
「使用人たちにカオルの服を用意させて。
それから客間を1つ彼女に。」
「はい。」
ベリエスはそう言うと、直ぐ様使用人たちに声をかけた。
薫は、なんだか申し訳なく思い、
「ごめんね、サラ。」
と言った。
「ううん、カオルが来てくれただけで僕は嬉しいよ。」
サラレギー陛下が一瞬仏に見えたのは気のせいか。
とりあえず心の中で両手を合わせておいた。
それから着替えを済ませ、覚悟も決まっただろう薫の部屋にサラレギーが現れた。
「似合うね、その服。」
「そう?」
「うん、とても可愛いよ。」
最強天然笑顔を浮かべながらサラレギーは、そう言った。
顔が火照る。
(今よ私!)
本命チョコを渡す
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