伝えにくい「ありがとう」
「マジでくれるのか!?」
「うん。」
有利はチョコを貰っただけで有頂天で、本命か否かなど気にしてはいないようだった。
なんとなく切り出しにくい。
グッと薫は、拳に力を込めて有利を見た。
「あの、有利。」
「ん……何?」
「そのチョコ、本命なの。」
「あぁ、分かってる。
義理に決まってるだろって…………マジで!?」
本日二度目のマジで!?が続いた。
目を見開いた有利は、チョコと薫を交互に見る。
(今よ、私!)
意を決して、口を開く。
「――…有利が好きなの。」
「……。」
有利は唖然としたまま、薫を見る。
彼女いない歴=年齢の有利には、ドッキリ過ぎるイベントだったらしい。
「本当に俺で良いのか?」
有利は遠慮がちに薫に聞く。
「有利じゃなきゃ、ダメなの。」
恥ずかしくて、怖くて、不安で、声を絞り出して薫は俯いた。
有利は黙ってしまった。
どれくらい経っただろう、ほんの数十秒だったかもしれない。
果てしなく感じられた沈黙の後、
「やべ…スゲー嬉しい。」
そんな有利の声が聞こえて、薫は思わず顔を上げた。
見つめあう瞳にお互いが映る。
「俺も好きだよ。」
有利がゆっくりとした口調で言った。
「私で良いの?」
「俺と同じこと聞くなよ。」
「あ、ごめん。思わず。」
なんだか可笑しくて、ホッとして二人は笑いあった。
「なぁ、食べてもいい?これ。」
有利はふいにそういった。
「うん。私も有利が食べてるところ見たいし。」
はにかみながら、薫はそう返した。
有利は、ありがとと言って、丁寧に包みを開いた。
その慎重そうな仕草に有利の優しさを感じて、心がむずかゆくなる。
「まさか、薫からもらえるなんてな。マジで感動したよ。しかも、手作りとか……あぁ、感動しすぎて涙出てきた。」
包みを開けながら、満面の笑みで笑う有利。
「大げさだよ。」
「いや、本当に嬉しいんだよ。
これで食べさせてもらえたりしたら言うことないんだけどね。」
「いいわ。」
「そうだよな、やっぱり無理だよなぁ…………ってマジかよ!?」
突っ込みの激しい有利。本日三度目のマジかよ!?だ。
「じゃあ、有利、目閉じて?」
「え…ああ、うん。」
有利は薫に言われるがまま、目を閉じた。
思わず薫の心臓が跳ね上がる。
(うぅ…勢いで言っちゃったけどどうしよう。)
有利の顔が目の前にあって、どうしようもなく鼓動が騒ぐ。
(ここは…。)
と、自分を奮い立たせて、チョコを1つつまんで有利に言った。
「口、開けてくれない?」
「ぇ、あぁ、ごめん。」
そして、その口にチョコを放り込んだ。
「うまっ。お前天才じゃん!」
有利が、急に目を開いた。
「あ。」
(近っ……。)
薫が有利の反応を見るために顔を覗き込んでいたせいもあって、二人の顔はキス寸前。
「きゅ、急に目開けないでよ!!」
「ご、ごめん。」
有利と薫は、同時に目をそらした。
「有利。」
「ん?」
「ありがとう。」
いつもならすんなり言える何気ないその言葉が、重みを増して心に響く。
「お、俺のほうこそ、ありがとな。」
二人ががる『ありがとう』の言葉。
それは魔法に似た二人だけのおまじない。
あとがき
マジで!?を連呼しまくりのゆーちゃんです(笑)
おまけ(台本形式)
有利「はぁ、美味かった。」
薫「ふふっ、ありがと。」
有利「なぁ、薫。」
薫「何……?」
首をかしげた薫に有利が口付け。
有利「今日の、お返し。」
薫「…不意打ちなんて。」
有利「いや、なんかお礼したくて。コレしか思いつかなかった…ごめん。」
薫「謝らないでよ……嬉しかったし。」
有利「そっか。なら良かった。」
有利は最強なほどに天然でした(薫談。
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